東京卍短編

紛れ込んだアメジスト

………あれ?私の鞄…………、えっ?」
1人で入ったレストランで食事をした後、お会計をしてホテルへ向かおうと席を立ち上がる…………が、横に置いていた私の鞄がない。
………!?」
椅子の下を見たり、周りをキョロキョロと見渡すも……私の鞄は無い。

………置き、引き……………?」
自分の管理が甘かったのだ。
ここは日本ではなく…………、ニューヨークなのだから。

 

**

 

私は日本で働くただの普通の一般人……、いわゆるOLだったのだ。
上司のセクハラが酷く、こないだ会社を辞めた。
神様っていないものらしく、そんな時に彼氏にも振られた。

貯金を崩して、傷心旅行という海外へ1人で来たわけなのだが………

少し高そうなレストランに入り、ご飯を食べ今からホテルへチェックインの予定だ。

それなのに…………鞄がない。
鞄の中には財布どころかスマホも、パスポートも入っている。

お会計どうしよう………
急いで事情を説明して警察に行かなきゃ、と思うものの………英語はカタコトなので何てお店の人に伝えればいいか分からない。

席を立ち上がり、レストランの店員さんを探して声をかけた。

「え……エクスキューズミー……
……どうなさいましたか?」えいご

………あっ、えっと、……I’m little little English !えー…………lost bag………
………?」

店員さんは困ったように私のカタコトな英語を聞いてくれるものの………あまり伝わっていないようだった。

「あ、えっと、その……置き引きに………ええっと………i can go to police?」
…………police?」

店員さんは首を傾げながら私の言葉の続きを待ってくれているが、何と伝えればいいのかさっぱりわからない。

……どうしよ……………
このままじゃ身分を証明するものもないし、ろくに話も出来ず警察に捕まるだけなんじゃ?と………不安が一気に襲ってきた。

――その時

Pay for the woman there

店員さんは肩をトン、と叩かれその人へ振り返る。
スーツを着た長身の………男性だった。

……………thankyou…
店員さんはその男性と私をチラチラ見ながら、差し出されていたお金を受け取る。

…………え?」
何で私を見るの?と思いながら店員さんが受け取ったお金を見る。

明らかに多い、お札。
ざっと4人分ぐらいの料金だ。
どこかの団体客が、支払いに来たのだろう。

「置き引きにあったんだろ?」
…………え?」

男性にかけられたその言葉に驚きを隠せなかった。
話しかけられたその言葉は………日本語だった。

「え?日本語………、あ、そうなんです!」
このタイミングを逃したら、私はただの食い逃げ犯になってしまう!そう思い男性に向かって必死に説明をした。

……だーいじょうぶ。オマエの分も払っといた」
「え!?………いやいや、さすがにそれは……!ここ結構高いでしょう……?」
ぶんぶんと頭を横に振るが、男性は笑みを崩さない。
そればかりか、私の腰に手を回しグイッと引き寄せた。

「もう払っちゃったし、………あ、そうだ。お礼と思って付き合ってくんない?」
耳元でボソッと呟かれたその言葉に私は従うしかなかったのだった。

 

**

 

「あ、あの………えっと。灰谷……さん?」
「おー。俺のことは蘭ちゃんって呼んでくれていいぜ?…名前ちゃん。」

その男性、名前は灰谷蘭というらしい。
あまりにも英語がペラペラなので外国の方だと勘違いしていたが、出身は日本らしく今は仕事でこっちへ来ているらしい。

お店を出て、私は自分の名前を伝え……現場の説明をしたところだ。

腰に手を置かれたまま蘭さんは何処かへ歩いている。

………あの、蘭さん?ありがとうございました。すぐ警察に行って、なんとかして直ぐにお金下ろすので……警察へ…………
………んー?そんなのいらねぇよ。……あ、ついた。」

蘭さんが足を止めたそこには、見上げるぐらい高層階まである…………高級そうな建物だった。

「蘭さ……………
「言っただろー?お礼だと思って付き合ってって」

逃がさない、と言わんばかりに腰に回した手の力を強められ、そのままフロントを通り抜ける。

……
蘭さんはエレベーターの前で立ち止まりボタンを押した。

これってもしかして………代わりにワンナイトしろってこと?
……………そ、そんな経験ないんだけど……………

心の中では焦ってどうしようと思うものの、ここは日本ではない。………助けを求めようにもら言葉が通じる人はいないのだ。

到着したエレベーターに乗り込み、強く引かれ中へ入る。

「店に入ってきた時から、かわいーって思ってたんだよなぁ」
男性はエレベーターのボタンを押した後、私の顎を指で持ち上げ………キスをされた。

………………っ!?」

……?初めて……とか、んな訳ねぇよな?」
目を見開き驚いた私を見て、蘭さんは悪戯っぽく瞳を細めた。

……………お金の代わりに、抱かせろってことですか?」
………………
思ったよりも低い声だったからだろうか。
蘭さんは動きをぴたりと止めた。

………っくくく」
…………?」

私から顔を逸らし、口元に手をやった蘭さん。
笑われているらしい。

「あ、あの………助けてくれたことはありがたく思ってますけど………私、ワンナイトとか経験がないのでちょっと……
「あははははっ!………最高だなオマエ!」
「え?」

ヒィヒィと苦しそうに笑う蘭さんと頭にはてなを浮かべた私をよそに、エレベーターは目的の階へとついたらしい。

扉が開き、今度は肩を抱かれながらついていく。

「ここ、ホテルだと思ってる?」
「え、違うんですか………?」

もしかして、私、体を要求されてるって勘違いしてる……
冷や汗がどっと溢れた気がした。

蘭さんは「そりゃそうだよなぁ」なんて言いながらスーツの内ポケットからカードキーを取り出し、部屋の施錠を解除した。

…………え!」
部屋の中に入るとそこは、目の前が一面パノラマになっていた。
……………家具はモノクロでシックに纏められている。

「もしかして……、蘭さんのお家…………ですか?」
「んー?そうだけど」

ホテルへ連れ込まれるのだと勘違いしていた自分が恥ずかしくなった。いや、自分の家でも同じなのか
………警戒はとかないまま、スタスタと広すぎるリビングへ向かう蘭さんを玄関で待つ。

……入らねぇの?」
「あ、……さすがにお邪魔するのは悪………

蘭さんはリビングに置かれた大きすぎるベッドに腰掛け、スーツやワイシャツを脱ぎ捨てていく。

……え、……え!」
あたふたする私のことは無視するように、蘭さんは服を脱ぎ捨てていった。

…………!」
裸になったその肌から見えるのは………刺青。
冬でマフラーをしていたから分からなかったけど、首にもひとつ刺青があった。

……お、驚かねぇのな?」
蘭さんはどこか楽しそうに玄関に立ち尽くした私の方へ近づいてくる。

友達が、タトゥーとか入れてる子がいたので。」
後ずさるも、後ろは玄関の扉。
扉を開けて逃げても………直ぐに追いつかれるだろう。

………お礼、ちゃぁんと蘭ちゃんにしてくれるよなぁ?」
蘭さんに腕を掴まれ、リビングのベッドへと引っ張られる。

…………あっ」
ベッドへ強く引っ張られ、途中で腕を離されそのままベッドへ倒れ込んだ。

………や、まってくだ…………
…………♪
蘭さんは楽しそうに私のドレスワンピースを脱がしていく。
鼻歌を歌いながら……、慣れた手つきでファスナーを下ろした。

………ニューヨークに来てだりぃことばっかだったけど、名前ちゃんに会えて良かったなぁ〜」
嘘か本当かわからない、表情のこもらない声で服をずらされ……胸元が露わになる。

………わ、分かりました。」
蘭さんの胸元を両手で押した。

…………お礼、しますから……………その、」
…………
蘭さんは聞く気もないというように私の腕をどかし、ヌーブラを剥ぎ取ってベッドの下へ落とした。

顕になった胸をまじまじ見つめられる。

………お、最高じゃん」
…………あの、先にお風呂に入

私の訴えなどまるで無視したままことを進めていく蘭さんは、そのまま私の胸の突起をぺろりと舐め上げた。

―――あっ」
……感度もイイんだ?」
唇で啄まれたり、軽く舌で噛まれたり、指で弾かれたり………慣れきったその行為から与えられるソレは絶妙な刺激だった。

んっ…………あんっ………
胸ばかり弄られ、自分も知らない間に腰がビクビクと動いてしまう。

蘭さ…………それ、きもち……………っんああっ」
背中が弓形に軽く反った。

―――何軽くイッちゃってんの?」

……………えっ」
蘭さんは胸元にぢゅうっ、と吸い付いた。

「やっ………あ、待って、痕付けな………
ドレスワンピースは胸元が少し見えるデザインなのだ。
痕をつけられたら何を着て外に歩けばいいのか、と腕に力を込めるものの……蘭さんはビクともしない。

ぢゅっ

「あっ………ひぁっ…………い、いた…………
ひとつ、またひとつと痕を残していく。

蘭さんは楽しそうに笑いながら幾つも痕を残していく。

「彼氏と旅行とかだったら面白ぇんだけどなぁ……?」
……………悪趣味なことを…………

ニタァっと悪い笑みを浮かべる蘭さんを見て、この人はきっと………良くないことをしている人だ。と再確認したのだった。

「逃げようとしたら……殺すからなァ」
耳元で囁かれたその言葉に私は腕に込める力を抜いた。

………………逃げるなら、もっと前でそうしてます」
抱かれる覚悟はしたが………私殺されるのだろうか。

頭の中に浮かんでくるのは、家族や友人………ではなく。
最近まで苦しめられていたセクハラ上司の顔や、別れた元彼の顔だった。

―――どうせ死ぬなら。それなら、最後くらい楽しんだっていいよね…………

私は蘭さんの大きくなったソレを触った。
「ねぇ………蘭さん。上手くないんだけど……………食べたい」
予想していなかった言葉だったのだろう、蘭さんは表情に出さないもののなぜだか………驚いているのが分かった。

「ハッ…………いーねぇ。蘭ちゃん嫌いじゃないよ。そーいうの。」

ほら、外してよ。とズボンのベルトに私の手を持って行った。
私は蘭さんのベルトを外し、ズボンを下ろし、そのままパンツも下ろしたのだった。

 

**

 

「あっ、だめ、もうっ……んっ、あっ……
「生でされてんのに嫌がんねぇの………?」

人生では初めての生挿入。
気にならないわけじゃない、むしろ頭では明日はアフターピル飲まなきゃなんて考えてるくらいだ。

蘭さんは慣れた腰付きで子宮の入り口……今まで味わったことのない場所へと強く打ち付けていた。
彼はかなり遊んでいるとは分かっていたのだが……私が思っている以上に手練れだ。

体を合わせてまだ数時間。
もうイイところを把握されてしまっている。
気持ち良過ぎて、どうにかなってしまいそうだった。

「んっ………いーの。」
…………ふーん?」

蘭さんの上に跨っているのは私なのに。
私が優位な体勢のはずなのに蘭さんは下からガツガツと強く突き上げてくる。

…………ッ、あー。射そ………ッ」
「ん………、ちょーだい?……中っ」
蘭さんはニッと笑い、腰の動きを速めた。

「あっ、あっ、も………っ、やらぁ………へ、んになっちゃ…………あんっ」
もう何度もイッているのに……彼は快楽を与えてくれることをやめない。

大きい彼のソレは私の子宮口まで届き、中へ入りたいとぐいぐい押し付けてくる。

「んぁぁあああぁあんっ」
一際大きい抗えない快楽の波に逆らえず、大きな声で身体を反り、絶頂してしまった。

………ふぁ、あ、………あ」
中へビュルビュルと吐き出されるソレは、まだまだ収まることを知らないようで……

「まだまだ、終わるつもりはねぇぞ?」

蘭さんは上に跨る私を、存外優しくベッドに押し倒した。
ギリギリまで引き抜いたかと思うと最奥までひと突きされただけでビクビクとイッてしまう。

「ぁぁぁあんっ………蘭、蘭さ…………まっ
「待つわけない………だろッ」
楽しそうに腰を打ち付けられ、容赦なく打ち付けられる。

……っふ、………あっ」
蘭さんは口の中も余すことなく全てを犯してくる。

ニューヨークにきて、傷心旅行3日目。

明日の夕方の便で帰るというのに………

もし生きて帰れたら、これは良い思い出だなぁ。なんて思いながら快楽を素直に求めた夜だった。

「ふ、あんっ、もう、あっ、あっ、んっ」
呼吸がうまくできなくて、口から涎がつうっと垂れた。

「沢山出してやるよ……………孕んじまうかもなぁ?」
涎をペロリと舐め上げ、蘭さんに指で口を開けさせられる。
腰の動きは止めないというのに器用な男の人だな、なんてぼやける頭で考えていると………

「飲めよ」
蘭さんは口から涎を垂らし、私の口内へと落としていく。

……っ、…………っんん、」
ごくん、と落とされるソレを飲み込んでいく。

「唆るのが上手い女だなぁ……?」
語尾にハートマークがついているように聞こえる甘い台詞。

彼に何人の女が泣かされてきたのか………
蘭さんは頬を赤らめながら笑っていた。

「ほら…………まだまだ射すぞっ」

また中へと白濁液が吐き出される。
繋がってるソコからは受け切れなかった大量の白濁液がごぽりと溢れていく。

「ぁあ………んあっ」
「なぁに溢してんだ?…………全部飲めよ」

ゴチュンッと一際強く腰を押し付けられ、零さないというように奥までグリグリと蓋をするように蘭さんの根元まで全部入れられた。

「あーーっ!、あっ…………………―――っ」
もう体の感覚が分からなくなってきた。
……快楽を受け過ぎたのか、体の震えが止まらない。

「おいおいまたイってんの?……つーか麻痺するほどきもちいーの?」
奥をグリグリされながら、胸の突起を弄られる。

………っは、…………ぁああ、」
「目ぇ、トッロトロじゃん。……蘭ちゃんいないともう満足できないね?」
まともに返事ができているのだろうか。

……あ、…………蘭さ………ん。」
私は残る力で腕を蘭さんに回し、ぎゅう、と抱きついた。

………こんなの初めてって顔してんなぁ」
もっ………と、もっと欲し…………
………はははッ!こんなに相性合う女はそうそういねぇよなァ!………名前ちゃん?………飽きるまで飼ってやるから、有り難く思えよ〜?」

………………っあ、あああんっ」
再開する腰の動きに………彼がなんと言ったのか理解できなかった。
…………きっととんでもなく恐ろしいことなんだろうなとは理解しているのだが。

「あーーっ、ぁぁああああっ」
「射す……………ッ」

何度目かソレがまた吐き出された。

………オレのオモチャにすんなら、まだ孕まれちゃ困るんだよなっ」
サイドテーブルの引き出しだろうか?
ぼやける視界で確認できるのは、ゴソゴソと彼が何かを探していた。………そしてビッと何か袋を開ける音が聞こえた。

「ほら、飲め飲め」
……っう」

蘭さんから何か丸いもの?を口移され、力無く飲み込んだ。
思わず薬物とかだったらどうしようと思うものの…………そんな考えは白い波に飲まれて消えてしまう。

「じょーずじょーず」
蘭さんはトロトロの私の頭を撫でてくれる。

「これからも蘭ちゃん専用の身体でいろよ?…………他の男のモン入れたら…………どうなるか分かってんな?」

蘭さんはぬぽっとドロドロなった大きなソレをそこから抜いた。

………っはぁ………んっ」

まだヤりたい?………オレの形のまんまヒクヒクしてっけど」
クスクスと笑う蘭さんは長い指をねじ込んだ。

……っひゃ、あう………あんぅぅうっ」
長い指をいきなり三本いれられ、中で動かされる。

……一発ヤれたらって思っただけだったけど、まさかのイイモン拾えたなぁ?」
蘭さんは指の動きを早め、私はまた背中を弓形に逸らしてイッた。

何か水温が聞こえる。

「おーおー。名前ちゃんは潮吹けんだ?」
……………?」

ビチャビチャとシーツが濡れていき、太ももがヒヤリとした。
潮を吹いたことなど人生で一度もないのだが…………答える力も入らず、腰も背中も動きそうにない。

「っあ…………、蘭さん……………もう、おわ…………り?」
ポロ、と恥ずかしさなのか目の端からは涙が溢れた。
自分でも何を言ってるのかもう分からない。

…………まだシたい?……今でもそんなんなってんのに、死んでもしらねぇぞ……イイの?」
…………うん、」

小さくこくりと頷くとまだ大きい蘭さんのソレが、既にその形を覚えた私の秘部へと飲み込まれていく。

「ッはーーーー。キッツ………、最高だわ…………。」
「ぁぁあああんっ」
ずぷずぷ、とソレを飲み込んだだけでイッてしまう身体。

……………………トばすなよ?」

この日は何回中に出されたか―――覚えていない。
何度も何度も体を合わせ…………、私の意識がハッキリしなくなってもずっと…………中に出され続けたのだった。

 

**

 

…………………ん、」
重い瞼をこじ開け、目を開ける。

「あー、起きた?」
ベッドに腰掛けたスーツを着た彼…………蘭さんはタバコに火を付けていた。

「取られた鞄、探してやるよ。………何が入ってる?」
………………え?」
寝起き早々意味が分からないが………、財布と携帯とパスポート……と伝えた。

「日本から来てんだろ?……キャリーとかはねぇの?」
現地で全部買えばいっかと思って、貴重品しか持ってきてない………。」

……。探してやるけど、その代わり………。」
………………?」
蘭さんは私の身体に触れるように人差し指で指差した。

……………っ!」
それは身体のあちこちに残された…………赤い痕だった。

「全部面倒見てやるから…………オレ専用のオモチャになるよな?」
今ここで断ったら殺されるのだろうか。
彼は一体何者なのか。
分からないことだらけだけど………外国で捕まって騒ぎになって………なんてのはごめんだ。

下心でも助けてくれたのは事実だし、着いてきた私も悪いか、と覚悟を決め、頷いた。
「おー、いい子いい子」

「あと1週間でこっちでの仕事が終わる。終わったら日本に帰る。…………こっちでも日本でも楽しませてくれよ?#ノア#ちゃん。」
…………!」

その言葉に昨日のことを思い出し、子宮が疼いたのが分かった。

………んな顔すんなよ。……帰ってきたらまた可愛がってやるから」
蘭さんはタバコを灰皿に押し付け、私の頬に優しく手を添えた。

「逃げたりしたら……分かったんだろーな?」
……逃げない。ちゃんと、ここで待ってます。」
真っ直ぐ蘭さんを見つめ、私は添えられた手に自分の手を重ねた。

……………ックク、肝が据わってる女はイイなぁ。」
…………どうも。」
私の返答に満足したのか蘭さんはベッドから立ち上がり、別の部屋へ行った後、またリビングへ戻ってきた。

「これ、」
ポイと渡されたのは携帯とブラックカード。
…………………ん?」

「好きなもん食えよ、出前。腹減ってんだろ。あ…………あと、女の服とかねぇから必要なもん好きなだけ買っていい。」
「や、いやいや、そこまでしてもらうわけには……!」

名前、自分のオモチャを世話して着飾んのは当然だろ?………遠慮してっと適当にオレが揃える、めんどくせーけど。」
蘭さんはじゃー、仕事行ってくるわ、と言い残し玄関まで歩いて行った。

………いってらっしゃい……

 

**

 

自分はどうしてしまったのか。
昨日あんなことをしてしまって、可笑しくなったのだろうか。

渡されたカードに目を落とすと………きちんとローマ字でRAN HAITANI と記されていた。

………………はー………
深くため息をついた後、ベッドから立ち上がり………部屋を見回しキッチンへ向かった。

流石に喉乾いたな、と食器棚からコップを借り水道水を飲んだ。

…………生き返る。」
冬だからか水道の水は冷たい。
今の私を落ち着けるためには丁度良い温度だった。

ピロン

………え」
渡されたスマホから音が鳴った。
誰からなんだろうと思いながらスマホを覗くと……通知には「蘭」と書かれていた。

………何者なのあの人………
普段から準備してたのだろうか、サブの携帯って訳でもなさそうだな、この携帯。

そう思いながらロックのかかっていない携帯を開く。

「蘭 出前が嫌なら、冷蔵庫にテキトーに買ってある飯があるから好きに食え」
と、それだけ送られてきたらしい。

…………………この人本当に何者なんだろう」
不安しかないこれから、にどこかゾクリとした寒気を覚えながら冷蔵庫を開けた。

―――とにかく、帰りを待つことにした。

 

**

 

その後、毎晩毎晩抱かれ続け
昼間は寝てるかご飯を食べるかお風呂に入るか……

身体が元気な時は少し掃除をしたり。

1週間はあっという間に立ち、日本行きの飛行機へ乗せられ…………東京へ着いた。

ニューヨークのあの部屋は引っ越し業者にまるっと箱詰めから任せているらしい。

蘭さんに連れられたどり着いたのは、東京のとあるタワーマンションの一室。

持ってきた荷物を置いて、その後着いてこいと言われ………………また別のビルへとやってきた。

…………蘭さん、あなたって………………
…………紹介してやる、ここが梵天だ」

有名な犯罪組織、梵天。
その面々が揃っていた。

後に紹介してもらった三途さんという方は「……は?なに女連れてきてんだテメェ」っていきなり睨まれた。
ため息をつく九井さんと鶴長さんはよそに、「これ、弟」と弟の灰谷竜胆さんを紹介された。

最後に首領の「マイキー」と呼ばれた人を紹介された。

「暫くオレの元で飼おうと思ってて、まぁ………仮になんかあったらアレだからな、一応紹介。」

きっと仮になんかあったら、というのは自分達へ不利益なことがあったり、牙を向いた時は……と言う意味なんだろう。

………興味ねぇけど、邪魔したら殺す」

マイキーと呼ばれた首領はそれだけ私に言うと、ふいっと本当に興味なさそうに顔を逸らした。

………蘭さん、あの…………
……………なに?」
私はふと、思いついたことがあった。
仕事も辞めたところだし、ただ飯食らいのヒモ状態なのだ。
何かできることがあれば嬉しいのだが………と提案してみた。

「私、パソコンとか使えるけど………仕事とか手伝えることない?……………掃除とか、ご飯とか………………作れるけど」

私のこと言葉に周りは静まり返った。

………………………
……………え?何かまずいこと言っちゃった…………?」
周りの視線が痛くて、つい蘭さんに助けを求めてしまう。

「深い意味はないんだけど、その………。今……蘭さんの元でヒモ状態なので、何か出来ないかなって…………。怪しいと思うなら私のこといつでも殺せそうな方たちだし……………有名な犯罪組織ですし
ここまできたらどうなってもいいと思ってしまえるもので、ははは、と頭をかいた。

声を張り上げ笑い始めた蘭さん、怒り始める三途さん、ため息をつく鶴丁さん、驚く九井さんと灰谷弟さん………………

九井さんという方が「どれくらい使えんの?」と私に質問した。

「パソコン………?以前OLだったのでひと通りは…………あと、そうだなぁちょっとだけならプログラムも触れます…………よ?」

「へぇ…………それなら、まぁ、マイキーが良いっていうなら事務作業だけでも人手が増えるなら俺は助かる。でも、……………本当にコイツは信用できんのか?」
……名前は蘭ちゃんがいねぇと生きていけねぇもんな?そんな心配いらねぇよ」
九井さんの疑問に蘭さんは楽しそうに答えるが、
「良いわけねぇだろ!」と三途さんはすかさずツッコミを入れる。

首領のマイキーさんはというと、表情ひとつ変えずに告げた。
「別にかまわねぇ。…………けど、邪魔だと思ったら迷わず殺す。」

マイキーさんはどこか怖い………んだけど、なんだかそれだけじゃなくて。
なんだか………………いないんだけど、弟を見てるような、そんな気持ちになるというか。

…………はい。」
ひとまず、許されたらしい。
私はこの犯罪組織梵天、で働くことになったのだった。