ピオフィ短編

マリオネット・ラブ

……………ん、」
重い瞼を持ち上げ、目の前に広がる天井を眺める。

今日は昼食を食べた後、みんなと広間で談笑していた。
……のだが、急に眠気が襲ってきてそのまま広間のソファーで眠ってしまったところまでは覚えている。

………え!?」

見覚えがない真っ白な天井に脳が覚醒していく、一気に上体を起こすと近くの扉の目の前で立ち尽くす恋人のギルが目に入った。

「お、目が覚めたか愛しのシニョリーナ。」
…………ギル?ここ……どこ?」

部屋は10畳ほどといったところだろうか。
周りを見渡してみても床も天井も真っ白で、部屋のど真ん中にひとつだけあるこのベッドも真っ白でどことなく薄気味悪い。

………俺もさっき目を覚ましたんだが、ここがどこだかさっぱりだ。」
ギルは困ったように笑い、ドアノブに手をかけるも…………ガチャガチャと音が鳴るだけで一向に開く気配はない。

……!ギル、見て!上………!」
……上?」
私はギルが立つ扉の上に何やら文字が映し出されているのを発見した。
ギルは上へと視線をやり…………、何やら考え込んだ。
私はベッドから飛び降り、ギルの横まで走る。

――恋人同士でとあることをしないとこの扉は開きません、か………。」
ギルは扉の上に書かれた文字を読み上げた。

………誰かの悪戯?一緒にいたオリヴァーは?」
「俺が起きた時にはあんたと俺の二人しかいなかった。それにしても、趣味の悪い悪戯だな。」

ギルは何か考え込んでいた。
私はキョロキョロと他に何かないか見渡すも、この部屋には窓も家具もベットしかなく…………調べるところすらない。

「素直に従ってみるか?」
ギルは一人でうんと頷き、私に向き直った。

「従うって?」
頭にはてなを浮かべながら傾げた私の問いには答えず、ギルは私を胸の中へ閉じ込めた。

――えっ」
「違うか?なら、」

ギルは続けて私の顎をぐい、と優しく上に持ち上げ、そのままキスをする。
――っ、ギ……ギル…………?」

そのままぺろ、と唇を舐められた。
薄く唇を開け言葉を発しようとした瞬間を見逃さなかったギルは舌を割り入れ、深く深くキスをする。

………っふ……………ん」
吐息が漏れる。
なんだか知らない場所でこんなことをするのが恥ずかしくてギルと目を合わせることはできなかった。

これでもダメか。」
「ちょっ………ギル!なんで急に……………あ、」
唇を離したギルは更に何か考え込むように眉を寄せた。

私は先ほどの扉の上に書かれていた文字通り、恋人同士で行う何かを試しているのだと今更ながらに理解した。

………………まさかとは思うけど。」
……そのまさか、だな。」
軽く睨む、も効果はなくギルは人好きのする笑顔で私を姫抱き…………にし部屋の真ん中にあるベッドへ運ばれた。

「愛しいシニョリーナと永遠に二人っきりってのも俺としちゃ嬉しいんだが……、さすがにずっとここに閉じ込められたままってのは困るからな。」

部屋にベッドしかないのだ。
―――やることはどう考えても一つしかないと言いたげなギルの瞳は真っ直ぐ私を捕らえていた。

……いいか?」

ギルは私を優しくベッドに押し倒し、言葉を待っていた。

……………不安でいっぱいなんだけど……ギルを信じることに、する。」
こくりと頷きギルを真っ直ぐ見つめ返した。

胸元から衣服が優しく脱がされていき、段々露わになっていく。

…………こんな、明るいとこで………、」

スイッチすらないのだ、電気の消し方も分かるはずがない。
明るいまま、ことを終えなければならないらしい。

……いつもあんたは恥ずかしがっているから、こうも明るいとこで、ってのも新鮮だよな。」
ギルはこんな状況でも心底楽しんでいるかのようにクツクツと笑った。

…………流石はマフィアのボスね。こんな時でもあなただけ余裕そうで……
私はムッとしてしまい、ギルのシャツに手をかけボタンを外していく。

「おっ……外してくれるのか?」
嬉しそうに問いかけてくる。

いつもなら恥ずかしいだの、明るいだの、見過ぎだの、騒いでいるのだが………………。こんな状況だからか頭も自然と冷静で、指先も震えることなくボタンを外していく。

…………や、やだ」
ギルのシャツを外し終え、前が開いたところで、
私は着ていたブラウスを完全に脱がされ、スカートしか身に纏っていないことに気付いた。

バッとつい両腕で胸を隠してしまう。
「シニョリーナ……、いつもは隠さず見せてくれるだろ?」
「いつもは電気も消えてっ」

スカートを捲り上げられ、太腿にギルの手が這う。

……あっ………
欲情に駆られたような瞳で私を見つめ、ギルが触るから、つい、つい色っぽい声が漏れてしまうのだ。

「!……これ」
「っえ………、あ、あ!」

ギルの手がスカートの中、下着に触れたところででピタリと止まる。
今日は特に予定もなく、どこに出かける予定もなかったので………、こないだマルタ地方の下着屋さんでプレゼントされたソレを付けているのだった。

「違うの!!ギル、これはその………、下着屋さんのお姉さんにオススメされて………!」
必死に弁解する。はしたない女と思われただろうか。

一瞬驚いた顔をするものの、ふっと笑い私の耳元で囁く。
―――俺好みだ。あんたは俺をこんなに喜ばせてどうするつもりだ?」
…………なっ」

意図も簡単に紐パンというやつを解き、しゅるっと剥ぎ取った。

………取っちまうのも勿体ねぇか?でも、」
ギルの指がそっとそこに触れる。

あっ……んっ……
我慢できずに漏れる声。
愛しそうに目を細めながら優しく触れてくるその指先に余計に感じてしまう。
「やっぱり俺はあんたの全てが見たい。―――愛してる、名前
ギルが真っ直ぐ私を見つめて、真剣な顔でそう呟いた―――その時。

『ガチャリ』

……………………!?」
―――!」

私は音のなった扉の方を見た。
扉が開く様子はないが……どうやら鍵が開いたように聞こえる。

ギルも驚いたのか目線だけで扉の方を見た。

…………開いた、の……?」
私はギルの腕をそっと掴み、グッと上体を起こした。

その時、ギルの上着のポケットから何か―――メモのような紙が落ちた。

「ギル?何か落とし―――、」
あ、」
ギルが何か言おうとしているが、すぐさま私はベッドのそばに落ちたそのメモを拾い上げた。

……………………ギル?」
私の声には怒りが込められていたと思う。
思ったより低い声が出た。

…………、その、俺が悪かった。」
ギルはしまったという顔で困ったように笑っている。

ギルのポケットから落ちたメモには
『愛してるって笑わずに言わないと出られない部屋』―――と書いてあったのだ。

……最初から知ってたのね?」
「あ、あぁ……実は起きた時に俺の枕元にあって………
視線を泳がせながらギルは正直に答えてくれた。

…………ここまでする必要はなかったわけね?」
………悪かった、反省してる。」
申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にする。

………………………はぁ。」
一つ、ため息をついてから、近くにあったブラウスを手に取り、ドアの方へ向かおうと立ち上がった時だった。

ぐい、と腕を引っ張られ、ギルの膝の上に座り込んだ。
―――シニョリーナ?さすがにこの状態でお預けってのは………
「こんな何処かも、誰がくるかもわからない場所で…………
いや、きっと大丈夫だ。」
なぜ言い切れるのか、不信感を抱きながらどうしようと考えていると―――

ギルはそろそろと指を這わせ、何も纏っていない私の秘部に指を入れた。
………んあっ………!?」
……こんな状態で我慢なんてできるか。その、シニョリーナ………後で謝るから……ダメか?」
ギルはどこか縋るように私を見つめてきた。
私はそんな愛しい恋人に弱いのだ。

―――後でほんとに怒るからね。」
………あぁ、反省ならいくらでも、―――後でするってあんたに誓う。」

 

**

 

「あんっ………っは、そこ………やぁっ………んん」
何度も身体を重ねているので、弱いところなど全て把握されている。内側………の弱いところに当てるように指を動かしている。

………まだイけそうだな、」
ギルは指を増やし、グチュ、と更に秘部に刺激を与え続ける。

「あっ、あぁ…………も、そこばっか……りぃっ……
生理的に目尻に涙が浮かぶ。
気持ちいいところばかり責められて、どうしたらいいのかわからなくなる。

ギルの膝の上に座った状態で、ギルに抱き止められているため動けない。
片手は中に刺激を与えられ、もう片手は私の胸を弄る。
与えられる快楽の逃げ場がなく、身体をよじっても逃げることなどできない。

だめっ、待って、もう………わたしイっちゃ………
体がビクビクと制御が効かなくなる。
背筋を海老反りにそらし、大きくビクビクと震え絶頂へ達した。

………っはぁ、はぁ………………え、あ………。」
息を整える間も無く、ズボンを少し下げ、性急に下からそれを入れ突き上げた。

「んああッ………んっ、まだ、まだイったばっ…………
私の声が届いていないのか、腰の動きとは裏腹に優しくひとつずつ胸にキスを落としていく。

「下から突き上げられるのもたまにはいいだろ?」
……んっ、んん…………、」
………っは、そんなことどこでッ………
身体は正直なのか、私は自然と腰を上下して自分からイイところを探し激しく動いていた。

……か、らだが……………勝手………にぃッ………
どうしたらいいのかわからず、困ったようにギルを見てみると、ギルは溶けたように笑った。

……俺の愛しい恋人はこういう時、いつも身体は正直だよな?」
……………!」

後でどうせ怒られるからだろうか、今日はいつもと違って意地悪だ。

……………ん、好きッ…………、ギルとするの………だいすき」
「!……、いつもそんなこと言わな………、ッもう手加減はできねぇ………ッ」
元々加減なんてするつもりなんてなかったくせに下からガツガツと激しく突き上げてくる。

ギルのおっきくて太いそれは、最初こそ受け入れるのがは大変だったが…………もう恋人の形も覚えたのか快楽の波に溺れられるくらいにはなっていたのだ。

「あっあっ、んぁっ、も、………も、だめだってぇ………ッ」
―――悪い、俺もう………

ギルがギュッと腕に力を込めた時、中でビュル、と吐き出されるのを感じた。

………っあ、わ、………んん」
私はこの瞬間がたまらなく好きで、吐き出されるそれを中で感じ、ビクビクと再び締め付けていた。

―――ッ締め………、」
ギルは苦しそうに眉間に皺を寄せ、……………最後まで全て中に吐き出した。

 

 

…………俺のテゾーロ、どうして今日はそんなに素直なんだ?まさか、こんなあんたが見れるなんて思ってもいなかった。」
私の頬に手を添え、繋がったまま彼は私に質問した。

…………ギルが、いつもより意地悪言うから。後でどうせ怒られるからいいやって思ったでしょ。」
………………あ〜、」
図星だったのだろう、なんて言おう?と考えているのが丸わかりの顔をされた。

そっと私は繋がったままの自分のお腹に手を乗せた。
…………それに私も、自分の欲望にたまには素直になってみようかなって…………ギルとするの気持ちよくて好きだし。」
―――ッ」

……………え?」
繋がったままの中が、再び熱を帯びたのがわかった。
落ち着きかけていた、それが再び熱量を増す。

「ちょっと待って…………、えぇ?」
「今のはあんたが悪い……、」

ギルはそのまま私の体をベッドに寝かせ、ギリギリまでそれを引き抜き最奥まで貫く。

「んぁああっ!?」
あまりの大きな快感に体がビクビクとのけぞる。

……感じやすくてすぐイっちまうところも……ほんっと、愛しくてたまらないんだよな。」
髪の毛をひとすくい取られ、さらりと唇を寄せる。

っ、お、おねが………、待っ…………
―――待てない」

私の静止など聞く気はないとばかりに、再び荒く激しく腰が打ちつけられる。

「や、やぁ、もっ…………んぅ…………気持ちいッ……意識飛んじゃ…………
………愛してる、名前

深い、深いキスをされる。
舌が絡まり合って、もうどちらのものか分からないほど……………、唾液を交換した。

止まらない腰の打ち付けに、先ほど中に吐き出されたソレなのか、私のものなのか分からないほどドロドロとシーツに冷たい大きな染みができていくのが分かる。

耳には肌を打ち付ける音と、バチュ、グチュとドロドロした液体が音を立てていた。

…………んぁああああんっ」
大きく身体がのけ反り―――本日何度目かの絶頂と共に頭が真っ白になり意識が底で途絶えた。

 

**

 

………待ってくれ!俺が悪かった!本当に反省してる!」
………ギル、ついてこないで!」

その後、意識を飛ばした私に服を着せ直し、抱き抱えたギルは部屋を出て―――
ブルローネから少し外れたところに作った小屋だったらしい。

なんと、この真っ白な部屋の仕掛けはディレットーレの悪戯だったことが判明する。―――さらに言えば、事前にギルは知っていたらしい。

絶対に安全だからこの仕掛けに試験的に協力して欲しい、なんだったら護衛でもなんでも連れてきていいし、下見に来てもいい、謝礼もする、なんて条件付きで、……絶対に安全なのか事前にギルは確認していたらしい。

―――抜かりない部分にはさすがマフィアのボスだと安心するが、そこではない。

これはつまりギルにも騙されていたと言うこと。

私はというと、ヴィスコンティに戻ってきて「お風呂に入ります!」と告げると「悪かった、俺に全部させてくれ」なんて真面目な顔で言ってくるものだから―――

無理やりお風呂の扉を閉めた。

「ギル、本当に反省してるの?まさか知ってたなんて!…………結局そのまま意識飛ばしちゃったじゃない!もう……、少しは手加減して!」
お風呂の中から外へ叫ぶ。

―――!」
今の言葉は取り方によれば意識を飛ばすほど気持ちよかったと自ら言っているようなものだ。
ハッと自分の言葉の軽率さを恨むが、時すでに遅し。

……もう!!ギル聞いてるの!?」
………聞いてる、聞いてる。」

どこか笑いを含んだその声に、私はまた「暫くそういうことは禁止!」と真っ赤になって叫んだのだった。