ピオフィ短編

予想外の答えと媚薬

「今日は会えて嬉しかった!」
蔓延の笑みでわざわざファルツォーネの屋敷の玄関まで送ってくれる友人のリリィ。

「こちらこそ!ゆっくり話が出来て楽しかったよ!」
私も素直な気持ちを返しておく。

いつもファルツォーネに遊びに来るとほぼ毎回と言っていいほど、リリィの恋人であるニコラ・フランチェスカという男が楽しそうに邪魔してくるのだ。

勿論、空気を読んでくれることも多いが恐らくリリィを独り占めされるのが面白くないのだろう。

女子同士「夜、ベッドで相手に満足してもらえてるのか?」なんて話に花を咲かせていたらニコラが楽しそうに私たちの間に割り込んできたことも記憶に新しい。

「それじゃあ、あの、全然大丈夫なのにいつもありがとう。」
「そんな、その、ニコラもこの方が安心でしょって言ってくれるし気にしないで!」

ファルツォーネの玄関前に止められた車。

私が今いさせてもらっているヴィスコンティの屋敷まではそう遠くない、なのにリリィは心配だからといっていつも車を頼んでくれる。

恋人のギルバート・レッドフォードも車で送り迎えしたいと言うが、流石にそこまで過保護にならなくていいと断っているというのに

「ほんとなんだかリリィに言われると断れないんだよねぇ。」
……え?」
「あ、いや、こっちの話!それじゃあ……

どういう意味?、と彼女に聞き返される前に車に乗り込もうとした瞬間、今日は見なかった彼女の恋人の声がした。

「あっ、リリィ、名前、間に合ってよかった!」
ニコラは焦ったそぶりもなく颯爽にファルツォーネの玄関まで現れたのだ。

「ニコラ?どうしたの?」
「ちょっと名前に渡したいものがあるんだけど、いいかな?」

私もリリィも頭に「?」を浮かべていると、ニコラがスーツの内ポケットから小さな小瓶を出した。

「はい、これ」
「えっな、な、何ですか?これ

差し出されたのはいかにも怪しそうな真紅の液体が入った高そうな装飾が施されたガラスの小さな小瓶だった。

「この前、夜、彼に満足してもらえてるのかなぁ?って2人で話してたでしょ?」
「なっニ、ニコラ!」
リリィがニコラに責めるような目線を向けた。

名前が、大胆になれなくて悩んでるって言ってたから僕の彼女の大切なお友達だから力になれたらなって。」
どこか楽しそうに「ほらほら、受け取って」と無理やり私の手を取って小瓶を置いた。

「もしかしてニコラこれって、」
リリィはキョトンとしているが、私にはわかってしまう。

「君の考えてるモノで正解、媚薬だよ。」

………あ、ありがとうございます?」

「ギルバートの反応が楽しみだなぁ」と笑うニコラと、顔を真っ赤にして「ニコラ!」と叫ぶリリィをよそに、私は車に乗り込んだ。

仮にもアンダーボスともあろうものが、ファルツォーネの玄関でこんな話をしていてもいいものかと思いながらも、これで私の悩みは解決するのでは?ときたいを膨らませていたのだった。

 

**

 

恋人のギルバート・レッドフォードという男は優しい。

いつも私のことを優先してくれるし、喜ばそうとしてくれるし、いつもいろんな物を与えてくれる。

ブルローネにきて行き場のなかった私をヴィスコンティの屋敷に住まわせてくれ、紆余曲折あって恋人同士になったのも1年前の話だった。

恋人になって1年、もう何度も夜は共にしているし、そういうことも数えきれないほどしているのだが………

優しい彼だからこそ、無理強いなんて絶対にしてこない。
たまにこうして欲しい、って希望を伝えてはくれるものの……、私は経験も乏しく、そういったことに自信がない。

果たして彼は私で満足しているのだろうか?
なんて疑問が湧いてくるのである。

そんな話を相談できるのも、去年知り合って仲良くなった彼女、リリィだけなのだ。

まさか話に割り込んできただけではなく、ニコラはしっかりと盗み聞きしていたわけだ。流石はファルツォーネのアンダーボス。

まさか媚薬なんてものに頼る日が来るとは思わなかったが、彼のまえでは恥ずかしくて大胆になれない私にとってはこれが「魔法の薬」なのだ。

ファルツォーネの構成員の方が、「着きましたよ!名前さん!」と車の扉を開けてくれる。

「いつもありがとうございます!帰り道、気をつけてくださいね。」

去っていく車を見送りながら、私は親身に相談に乗って助けになろうとしてくれる私の大切な友人たちにも背を押されたことだし、今夜はこれで頑張ってみよう!と決心したのだった。

 

**

 

「今日はリリィに会いにファルツォーネへ行ったんだって?」
「うん!とても楽しかった!リリィはなんだかまた綺麗になっていて

ヴィスコンティでは広間で全員が一緒にご飯を食べる。
この日の夕食もそう。私の恋人でありヴィスコンティのボスであるギルバートは自由を愛する男。身分のような上下関係も厳しくなく、みんなフレンドリーなのだ。

「へぇ、それはまたニコラにしっかり愛してもらってるようで安心だな。……名前も毎日毎日綺麗になっていってるんだぜ?ま、あんたは自分じゃ気付かねぇか。」
「もう、ギル!みんなの前で恥ずかしいってば!」
「ははっ、そう恥ずかしがらなくても、ほんっとにいつまでたっても慣れねぇな……そういうところも可愛くてしょうがないんだが。」

ギルは隣に座る私の頬に手を添え、頬に口付けた。

こういう恥ずかしいことを嘘偽りなく本心でサラッと言ってのける男なのでこういう時ばかりは、ギルの隣でご飯を食べている状況を恨めしく思うのだ。

……ギルバート、また彼女に怒られるぞ。その辺にしておけ。」
私と逆隣に座るオリヴァーはため息をつきながら私の味方になってくれる。

……俺はいつも本気で言ってるんだぜ?オリヴァー。」
「はぁ……、そんなことは分かっている。しかしギルバート―――

これはいつもの流れで、ここ一年こういったやり取りもヴィスコンティではもはや名物と化している。

苦笑いしながらご飯を口に運んでいると、ルカが「姉ちゃんもほんと大変だよな」と呆れ顔をしていたのだった。

今日も美味しいご飯を食べ終わり、今日は早めにシャワー浴びようかな?なんて考えながら、お昼ファルツォーネでのニコラから貰ったあの小瓶のことを思い出していた。

(媚薬……、ニコラのこと信じてないわけじゃないけど本当に効果ってあるのかな?)

……で、すごく綺麗な装飾が施された小瓶の中には真っ赤な――
……えっ!?」
意識を現実へ一気に引き戻された。
ギルバートがオリヴァーへ話している内容につい過剰に反応してしまったようだった。

……?、どうかしたのか?名前
なにか気になる点でもあったか?」

ギルとオリヴァーは私を見つめ、言葉を待っている。

「な、なんでもない。その、今日リリィとも似たような話をしたなぁって考え事をしてて……
この二人が広間で、女の私の前で堂々と話しているのだ、おそらく媚薬の話などではないのだろう。
なんだか恥ずかしくなって二人とは目を合わせられず、つい目の前に座っているルカに目線をやったのだった。

……?」
ルカは不思議そうにしていたが、さすが空気を読める子。

「俺も見てみたいなぁその小瓶、赤いジャムだっけ?どこに売ってんの?」とギルに向かって質問で返していた。

「あぁ、その小瓶は港の方のパン屋さんで――
オリヴァーは話を続けてくれたようだ。
ホッと息を吐く。バレなくてよかった。ルカのおかげだ。今度お礼をしよう。

流石に「夜、あなたを満足させられているのか不安でたまらなくて媚薬を手に入れたの!」なんて恥ずかしくて本人には絶対に伝えられない。

…………、」

ちらりと、ギルから視線を感じた気がしたので、私は何でもないと「私もそれ……、すっごい気になるから今度一緒に探しに行こう!ルカ!」と笑顔で返しておいた。

 

**

 

食事の後、少し広間で談笑し、それぞれ部屋へ戻った………が、ソワソワして全く何も手につかない。

シャワーは浴びたのだが、頭の中からずっっっとあの小瓶のことが離れない。

部屋に戻る前、「今日、夜……その、部屋に行ってもいい?」と小声で尋ねたところ「勿論!あんたならいつでも大歓迎だ!」なんて嬉しそうな顔で返事をくれた。

ギルのことだ、何かお喋りがしたいとか、側にいたい、とかそういう風に捉えたはずで………
まさか私からそういいことを誘ってくるなんて思っていないはずだ。

「だから、私も決心してこれを飲まなきゃ………

目の前のテーブルに置いてあるこの媚薬という「魔法」の小瓶。

少し震える手で小瓶の蓋を開ける。

……大丈夫、女は度胸。そう。絶対にそう!」

妖しく光る赤い液体を一気に口の中へと流し込んだ。

 

**

 

コンコンと軽くノックを二回。
名前です。……ギル、入っても?」

返事より早く、部屋の主が扉を開けてくれた。

「ちょうどあんたの顔を思い浮かべていたところだった。」
ニッと笑って部屋の中へ案内してくれる。

……気にせず適当に掛けてくれ、名前も呑むか?」
「あ、ありがとう。私は今日は大丈夫。」

ベッドに腰掛けた私の隣にギルは腰を下ろした。

テーブルの上にはロックグラスがある。
今日も彼は大好きなウイスキーを呑んでいたのだろう。

あの小瓶を飲んでから15分ほど様子をみたものの、特に何も変わらない。

熱くなったり、欲しくなったり……そういった効果は今のところ……………ない。
少し、ほんの少しだけ酔っているような感覚はあるかもしれないけれど…………、それも勘違いかもしれない。本当にその程度だった。

「ねぇ、ギル……。その、あの、いつもありがとう。」
………どうしたんだ?急にそんな改まって……。」

なんだか、何を喋っていいのか緊張してでてこなくて、つい……日頃のお礼を述べてしまった。
ギルはグラスを片手に私を覗き込んでいる。

「ギルは優しいでしょ?いつも……その、なんていうか……、私を大切にしてくれてるのが伝わってくるし……その、嬉しいなって。」
変にならないように言葉を選びながら、慎重に話した。

「そりゃ当然だ。なんてったって、俺の恋人には幸せになってもらわなきゃいけねぇからな。まぁ……あんたへの愛を伝えるには、こんなもんじゃまだまだ足らないんだが、」

……じゅ、じゅうぶん!伝わってるよ!」

視線を落とし真剣に考え込むそぶりをしたギルに、何か勘違いをさせしまったかもしれない、そう言うつもりで言ったのではないと私は首を横に振る。

「なぁ、俺の考えすぎならいいんだが……、さっきの広間でのことといい、何かあるなら隠さず話してくれねぇか?」

……え」

……今日ファルツォーネの屋敷から帰ってきてから……名前が何か考え込んでいるってことくらい、俺は気付いてるつもりだぜ?」

これは、よくない勘違いをされている気がする。

ギルはグラスをテーブルに置き、私をまっすぐ見て、「俺に話しにくいことかもしれないが、あんたに隠し事をされるのは、どうしても我慢できないんだ。」と私の手にそっとギルが自分の手を重ねてきた。

……ッ!」

その瞬間、全身に稲妻のようなものがビリっと走り抜けた。
まるで、甘い、甘い稲妻のような何かが。

「?」

ギルも私の反応に気づいたようで、目を細めた。

――まさか、怪我でもしてるのか?」

私の腕を掴み、グッと身を寄せるギル。
ギルの体が触れているだけ、それも腕を掴まれただけ。

それだけなのに。

……ッ、ギ…………、」
恋人の名前を呼ぶので精一杯だった。

頭の中ではさっきまで、どうやって誘おう、とか、大胆にとか実際にどうしたら、とか沢山沢山考えていたのに。

触れられただけで、いつも私を愛してくれるギルを思い出して一気に体の温度が上昇した。

……名前、まさか――

何かに気付いた彼が言葉を発する前に、目の前にある彼の胸を押した。

………え、」
…………………ギル、」
ギルからこんなに間抜けな声が聞けるなんて、本気で驚いている彼は初めて見たかもしれない。

押し倒してやった。私は今ギルの上に跨っている。

…………その、こんなことするの初めてだから、分か……らないんだけど。」
私はギルのシャツのボタンを上からそっと外していく。
少しずつ見えてくるギルの肌、それだけで体温がさらに上がった気がした。

――名前、俺としちゃ気持ちは嬉しいんだが、無理しな―――、ッ!」

この男は、恋人の女がここまでしているのに、まだ優しくしてくれるのかと―――

無理やりギルに口付けることで言葉を遮ってやった。

……ギルはいつも、いつも優しいから、」
私は少し口を尖らせた。
ボタンは全部外し、はらりとギルのシャツははだけていた。

―――、」
ギルは驚いたように、照れたように一度目を伏せた。

………、」
今なら何でもできる気がする、まだ頭もちゃんと回っている、ただ、今はギルが欲しい。
ギルの眼帯に手をかけ、解き、ベットサイドのテーブルに置いた。

「ね、ギル。目、閉じて。」
ちゅ、と外気に晒された傷の残る左目に口付けた。

ビク、とほんの小さくギルは身じろいだものの、観念したように体の力を抜いた。
……積極的なあんたを見れるのは心底嬉しい。されるがままってのは性にあわないが――、こう、なんていうか惚れた女に責められるってのはいいもんだな。」

……!」
これは、喜んでくれている。
そう確信した私はギルの胸の突起に触れた。

……っ、」
顔を赤らめながらも私としっかり目を合わせてくれる。

「こんな照れたギル、見るの初めてかも……。」

気持ちいいのかどうかは分からないけど、そっと触れた後は意を決して舌でペロりと舐めてみた。

「なぁ、…………ま、待ってくれ」
グッと上体を起こしたギルは、そのまま私を抱きしめた。

「え……、ギ、ギル?ごめんなさ……なん……か、変だった……?」
抱きしめられ、更に私の体温は上がっていく。

もう、今すぐに何もかも忘れさせて欲しいぐらいには――、私も欲望に抗えなくなっていた。

え、ひゃっ」

気付いた時には目の前にはギルの顔と、天井。
一気に立場が逆転したと気づいた。

……熱い、な。始めは怪我でもしたのかと思ったが……この感じは媚薬か?」
「えっ

媚薬、その言葉がギルの口から出たことに驚いた――が、時すでに遅し。

私の反応を見て確信したようにギルは苦笑いをしつつもため息をついた。

―――楊は……違うな、ニコラか?」
……お見通しって……こと?」

羞恥で顔が染まっているだろう。
自分の顔を見なくても分かる。

「あぁ。そういえば少し前に、ニコラとそんな話をした覚えがある。聞かなくても大体予想はつくんだが、名前、あんたはどうしてコレを……?」

何故飲んだのか?そう私に問うている。

……恥ずかしいから言わない。」
……………教えてくれないのか?ニコラは知ってるのに俺は知らないなんて、嫉妬で狂っちまいそうなんだが。」

そんな甘い言葉を吐きながら、ちゅ、と私の首筋に口付けを落としていく。

……んっ、」
いつもと同じ行為でも、今は首筋だけではなく全身で反応してしまう。

…………失敗しちゃった。」
……?」

彼はどこまでも優しい。残酷なほどに。
ここまで言っておいて、今も私の言葉を待っている。
決して無理やり吐かせようとはしない。

……ギルは、私で満足している?」
「!もしかして俺、あんたに不安にさせるようなこと―――
「ちがう!」

もうここまできてしまったら、嘘はつけない。

私、去年ギルにだ、抱かれるまで、その………、経験が……、なかったでしょ?……、いつも、その、優しくしてくれて……、大胆にもなれなくて……、」
しどろもどろになりながら、ギルに思いを告げる。

「リリィに相談してた、の。ギルは満足……してくれてるのかなって、そしたらニコラが話を聞いていて、」
性格には盗み聞きだけど、そこは黙っておこう。

「んっ………っあ、」
そこまで言えば、もう全て分かったのだろう。
ギルは私の唇を塞ぎ、口内を犯していく。

まるで何かを急くような、少し荒い口付け。

ギルが唇を離し、おでこをコツンとくっつけてきた。
……その答えは予想外だった。」
………え、」

「あんたは、たまに強情なところもあるが、周りも見えてるし、大事な芯もしっかり持ってる。だから、私もたまには積極的になりたい、とか、たまには攻めてみたいとか……、そういった理由なんだと予想してたんだが……、」
……ごめんなさい、強情な女で

「いや、どんなところも全部まとめて可愛くていじらしいのは……変わらないぜ?」
ギルはククッと喉を鳴らしながら笑った。

――満足させられてるかだって?」
グッと膝を外側に広げられ、ネグリジェの裾を捲り上げられた。

「何度抱いても満足できない位には名前、あんたに溺れてるんだがな。」

「っあ……、」
すっと、布を撫でられるだけで過剰に反応してしまう。

「ニコラには癪だが……、据え膳を食わぬは男の恥ってな。あんたもしんどいだろ、このままじゃ。」
ギルの瞳にはずっと熱が灯っていることに気付いていた。
揺らめきながらも、燃え盛るその熱を――

……今日は、私にも、させて?」
ギルのズボンの上から主張しているそれに手を添えた。

―――ッ、先に言っとく、今日は待ってって言っても、待ってやれねぇ。」
私もッ、待ってあげないっ、」

一気に余裕のなくなったギルも、私も、同じタイミングでお互い唇を合わせた。

次会ったら一応、ニコラに感謝しようなんて思いながら、甘い甘い夜はふけていった。

 

**

 

ん、」
体に馴染んでいるものはどんな時でも中々離れないようで、いつも起きている時間であろう、頭が覚醒した。

「おはよう、俺のテゾーロ」
ギルは私の髪を掬って愛しそうに目を細め口付けた。
お、おは、……よう……

先に起きていたギルと目があった。
と、いうことはギルに腕枕され眠っていたから、しっかり寝顔は見られているのだろう。

……っあ、」
寝顔を見られていたことよりも、それに勝る出来事が昨日あったのだ。ソレを思い出して、私は布団を引っ張って顔を埋めた。

昨日は大胆な名前がみれて嬉しかった。俺の勝利の女神様は、俺のあんなところまでも癒してくれて――、」
……も、もうギル!!!」

私は反射的にバッと布団から出て起き上がる。

昨日は初めて、……その、男性の……、ソレを………、奉仕した………
気持ち良くなってもらいたかったのだ。

「普段のあんたも堪らなく愛しいんだが、俺のためにここまで頑張ってくれるあんたも………愛しくて堪らない。」
ギルも起き上がり、私の額にちゅ、と優しい口付けを落とす。

………、ニ、ニコラに感謝……するべきなのかも?」
「いや……、それはしなくていいんじゃねぇか。」
ギルは苦虫を噛み潰したような顔をした。

愛しい恋人の可愛い悩みを聞かれたかと思うと正直複雑だし、媚薬を渡してきたってことは少なからず想像はしちまってるんじゃねえかとか………いや、でも……、リリィがいるのにそんな事はないって分かって「あはははっ」」

あんなにリリィのことが大好きで堪らないニコラのことを、ましてやギルが分かっていないわけがない。
それでも嫉妬しているギルが可愛くて、つい吹き出してしまった。

大好き、ギルバート。私もたくさんあなたに優しくしたいし、満足してもらいたい……。それに、もっと愛を伝えたい。」
……俺は毎日、あんたに惚れ直してる。一昨日も、昨日も、今も

ギルは私の頬に手を添え、掻っ攫うように唇を塞いだ。

世界で一番幸せにする。だから一生俺の側にいてくれ、名前

去年もそんな台詞、聞いた気がする。
私の恋人は本当にいつもいつも優しい。

私にいろいろなものを与えてくれるギルだからこそ、私もそれ以上に返してあげたくなるのだ。

―――もう媚薬は持ってないから、ゆっくり、少しずつにはなるけれど。

今日も、彼にたくさん愛を伝えようと思う。