ピオフィ短編

お節介な涙と決意

「それでギルバート、あの件なんだが
談話室をほんの少し覗けば、こんな朝方にも関わらずギルとオリヴァーはなにやら真剣に話し込んでいた。
……あぁ。俺の方からも話はつけてあるんだが―――、」

もうシカゴに立つ日も近い。
先日、私はシカゴに行くことを決めた。
ギルは考える時間をくれたけど迷うことなく決めた。

きっと……………その件だろう。……仕事の話だ。立ち入らないほうがいい。
朝早く目が覚めてしまい、再び眠る気にはなれなかったので談話室に足を運んだのだが………邪魔をしないようにと、私はそのままヴィスコンティ邸の玄関へと足を運んだ。

「んんーっ、今日もいい天気!」
玄関を出た私は朝日に向かって大きな独り言を呟きながら背伸びをする。
「おはようございます!」

「っはい!おはようございます?」
玄関から突然かけられた声に驚き、大きな声で返事をしてしまった。
……今日はいい天気ですよね!あの、これ名前様宛にお届け物です。」
さっきの独り言を聞かれていたのだろうか。
差し出された細長く大きな箱を受け取ったが、その男性とは恥ずかしくて目を合わせられなかった。

「ありがとうございます……。」
とっさに受け取ってしまったが、私宛ての荷物……?全く見当もつかない。
……………………え」
大きな荷物の裏側を見ると、差出人は「ユージーン」と記されていた。
ギルのお父様ではないか。

これはギルに見つかりでもしたら中身を確かめる前に「捨てろ」とか「俺が確認する」とか「どうせロクなもんじゃねぇ」って捨てられそう………
自室に戻って開けてみよう。
私宛てなんだし………大丈夫だよね?
私は朝早く誰もいない廊下を進み、自室へと戻った。

 

**

 

………………え?えぇ?」
一際綺麗な包装を解き、大きな蓋を開けてみると…………そこには真っ赤なドレスが入っていた。
…………………ドレス………?」
というかこのチョイス……ギルも選びそう、なんて言ったらギルは苦笑いするんだろうな。なんて考えながら、そのドレスを手に取ってみる。

上質な生地だ。
高価なものに詳しくない私でも分かる。
それに胸の谷間部分が大きく開き、体のラインが分かってしまう細身のシュッとしたデザイン。

………………………?」
その箱の底には小さな手紙が一通入っていた。
封を切り中を確認してみると、

「お嬢ちゃん。先日は迷惑をかけてすまなかった。お詫びってわけじゃないんだが、君に似合いそうなドレスをたまたま見かけたから、良かったらあいつの前で着てやってくれ。ps.息子には内緒で頼む!俺とお嬢ちゃんの約束な。」

先日ギルの父親はブルローネにきて、ひっちゃかめっちゃかに掻き回していった………
その贖罪のつもりなんだろうか。
……………………よくこんな大きな荷物を堂々と届けたわね………ギルにバレなかったのは奇跡ね…………。」
しかしこのドレス、どこに着ていくの?と自分の中でツッコミを入れたのだった。

 

**

 

「え?シカゴに立つ前にパーティーを開く?」
「あぁ!そうなんだ!シカゴに立つ前にパーっとパーティーを開こうと思ってる。……ヴィスコンティとファルツォーネに………リリィも呼んでみんなで!楊たちも呼びてぇんだが……、あいつは呼んでもこねぇか?」
朝食を口に運びながら、ギルは人好きのする顔で楽しそうに話す。

「わ!楽しそう!……私もパーティーの準備、何か手伝えることない?」
「もう準備は終わってるんだ。名前、あんたのその気持ちだけで十分だ。」
私には手伝わせるつもりがないのだろう、即答で返事が返ってきた。

………ギルバートが急に夜通しパーティーをやりたいからレストランを貸し切った!と言われて………
オリヴァーは困ったように俯きため息をついた。

……あぁ、なるほど。…………ギルらしいね。……オリヴァー、他に手伝うことない?」
「ありがとう。こちらも準備はすでに終わっているんだ。」
「さすがオリヴァー………。」
お疲れ様、いつも本当にありがとう。と心の中でオリヴァーへ念を送っておいた。

「それでそのパーティーでなんだが、とびっきり綺麗なシニョリーナを見たい。あんたに似合うドレスも買っておいた。」

………え?」
「あんたに似合う真っ赤なドレスで―――
…………ありがとう、ギル。でも私既にドレスは沢山あなたから貰っていて―――
「恋人を着飾るのは男の楽しみなんだ。何着でも贈らせてくれ。」
嬉しいけれど、また高いドレスを買ったのか………、着る機会もあまりないというのに。

流石にそれは口に出さなかったが―――、パーティーはとても楽しみである。
シカゴに立つ前にみんなに会えるし、友達のリリィにも…………会える。
私はワクワクしながら当日を待つのだった。

 

**

 

今日はパーティー当日。
ギルが贈ってくれたドレスに着替えて………あとはパーティーの時間を待つだけ。
着替えをクローゼットに直していると、ふと先日届いた赤いドレスが目に入る。

―――
ユージーンが贈ってきてくれたドレスだ。
………もしかして。」
このパーティーのことをどこかで知り、ユージーンはこのドレスを送ってくれたのだろうか?
それとももしかして………、今日、このパーティーに呼ばれている……………

いや、ギルが呼ぶとは思えない。
「ひっちゃかめっちゃかにされたとはいえ…………彼はギルのお父様…………。」
私はドレスが皺にならないようにドレスカバーごと綺麗におりたたみ、皆へ渡そうと思っている餞別という名のお菓子を入れているスーツケースに一緒に詰め込んだ。

その時、控えめにノックが2回鳴った。
―――名前、準備は終わりそうか?」
………うん!今行く!」
ドアをガチャリと開けた。

「やっぱり俺が思った通りだ。名前………綺麗だ。よく似合ってる。」
ギルは照れることなく真っ直ぐに伝えてくれた。
………それは、持っていくのか?」
ドレス姿なのに右手にはスーツケースを持っていた。
きっと似合わないのだろう。
ギルはスーツケースに怪しげな視線を向けていた。
「うん。………もうしばらく会えないだろうし、リリィやみんなに餞別を渡したくって!」

「!………そうか。喜ぶと思うぜ。」
ニコッとギルが笑い、私のスーツケースを優しく奪い、表で待っていてくれる車まで引いてくれた。

 

**

 

貸し切ったレストランにはもう全員集まっていた。………うん。明日は雪でも降るのだろうか。
老鼠の面々まで集まっている。

ギルが、「俺たちヴィスコンティはブルローネを立つことにした。だから、最後にみんなとパーっとやりたくてな!今日は集まってくれてありがとう。今日は無礼講で楽しんでくれ!」と大きく叫び、手に持っていたグラスを空にかかげ………「「「ブリンディジ!」」」と全員で乾杯をした。

「リリィ!寂しくなるけど……手紙書くから!!絶対!!」
「私も書くわ!……それに、名前とはいつかまた会えるって、そう思うの。」
リリィは私の両手を握り、涙で潤んだ瞳で見つめてきた。

………やだ、恋に落ちそう。私。」
思わずリリィの腕を握り返した。
…………その、いくら名前…、あんたでもそれは勘弁してくれ。」
リリィの横で聞いていたダンテが会話に割り込んできた。
ダンテ、冗談を間に受けすぎだよ。もう酔ったの?」
ニコラがすかさずツッコミを入れてくれる。

リリィの両目から涙がポロと溢れ、「ちょっとお手洗いに行ってくる」と小走りでかけて行った。
…………泣かせちゃった。ごめんなさい。ダンテ」
「いや、こちらこそ世話になった。本当に感謝している。」
彼はリリィの恋人だ。よく彼女のことを見てくれている。
彼なら安心して私の友達リリィを預けられる―――そう思った。

 

**

 

ダンテと分かれ、知り合いには一通り挨拶をしようと辺りを見渡すと。
外のテラスで一人ワイングラスを傾けている楊を見つける。
「楊……!」
私は彼の名前を呼び、かけよった。

………………………なんだ」
………なにその間。」

いつもの様に面倒臭そうに返事を返された。
楊はギルが苦手だと思う。だからきっと恋人の私にも近づきたくはないのだろう。

彼は、意外とわかりやすくて面白い。
「楊、色々とありがとう……。どこかで会ったらまた、挨拶くらいは返してね?」
チン、とワイングラスを一方的に乾杯してやった。

……………それまでお前が生きていれば、な。」
楊は私の耳元でそっと囁いたあと、グイと一気にグラスに入ったお酒を飲み干し、ホールへと戻っていった。

………………?」
あの楊が……酔っているのか?とも思ったが、いつもの気まぐれかと納得することにした。

そう思いテラスの外に目をやると―――
…………!!」

テラスの先に見えるレストランの入り口にはユージーンが立っている。
入ろうか入るまいか迷っているのだろうか、ウロウロしながら行ったり来たりしている。
ギルが呼んだのかな?なんて考えていると、頭をよぎる先日届いたドレスのこと。

……………着替えなきゃ!!」
私は急ぎ足で荷物を運んでくれたという別室へ行き、先日ユージーンから届いたドレスに着替えたのだった。

 

**

 

着替えた私は走ってレストランの玄関へと向かう。
もし、もしもユージーンがどこかでこのパーティーを聞きつけて、勝手にここへ来たのならきっとユージーンはこのままギルに会わずに帰ってしまうだろう。

そう思ったから少しはしたないけど、ドレスの裾を掴んで膝辺りまで持ち上げ、ヒールの靴でなんとか走れるスピードで急いで玄関へ向かう。
名前……?」
…………名前、そのドレスは………?」
走り抜ける途中、リリィとギルに声をかけられた……ような気がしたが振り返らずに玄関へと向かった。

息子の恋人にドレスを贈る理由なんて、一つしか考えられない。
それを着て綺麗に着飾った姿の恋人と一緒にいる息子を一目見たいに違いない。

「ユージーン!!」
玄関のドアを勢いよく開けると、驚いたのかユージーンは後ろに数歩後ずさった。

……………お、嬢ちゃん……。」
私は息も整わぬまま、ユージーンの手をグイ、と取りレストランの中へと引っ張る。
「いや、お嬢ちゃん!俺は招待されたわけじゃ……
「レストランの入り口まで折角来てくださったんですから………声、かけてあげてください!」

私はユージーンを振り向くことなく引っ張り、ホール内をキョロキョロとギルを探す。
「待ってくれ!俺は、その、ほら、息子にはもう……
………?」

このホールは今かなりの人数でごった返している。
ブルローネにいるマフィアが勢揃いしているのだ。
ざわざわしていて、小さな声はかき消され聞き取ることができなかった。

………
ユージーンに聞き返そうと振り向いたその時、
………何しにきた。」
聞こえたのは低い警戒をあらわにした恋人の声。
ギルが私の肩を掴み、自分の方へと引き寄せた。
しっかり掴んでいたはずのユージーンの手はすぐに引き剥がされていた。

………ギル!!」
私はギルへ振り向き説明をしようとしたがその言葉はユージーンに遮られた。
「あ、いや。たまたまそこを通りががっただけで、その、お嬢ちゃんに引っ張られて…………。」
「ブルローネから出て行け、と言ったよな?何でまだここにいるんだ。」
あ、いや、それは。」
ユージーンは視線を彷徨わせながら、私の方をチラと見る。

―――
ここで私に振るの!?、そう思いながらも私はギルに向かって言った。
「テラスにいたら入り口にユージーンの姿が見えたから……、引っ張ってきちゃった。ギルに会いに来たのよ。きっと。」
……………俺の前によく顔を出せたな。」
ギルはため息をつき、苛立ちを隠さずにユージーンを睨む。

ギルにとってユージーンは数少ない弱さにあたる部分でもある。
母親に暴力を振るっているところを目の当たりにしているし彼自身も父親のせいで片目の視力がほとんどない。
気持ちは分かってあげたい。でも流石に先日の件で反省しているだろうと思いたいし、何より腐っても家族なのだ。

彼は息子のことをどこかで愛しいと感じてはいるんだろうと私は感じるのだ。
ギルは父親とはもう二度と会いたくないだろうけどそれでもお互いが少しでも歩み寄ることができればとお節介を妬いてしまう私がいるのだ。

……ギル。何も聞く前からそういう言い方は良くない。」
私はギルに向かって静かに言った。

……名前、あんだだってこいつのせいで散々危険な目に
ギルの頬を両手でぱちんと小さく挟み、真っ直ぐ向かって言った。
「でも、私は無事だったし、ギルもヴィスコンティも無事だった。…………そうでしょ?」

………………分かった、ユージーン、おまえの話を聞いてやるよ。」
ギルは眉間に皺を寄せながら肩を落とした。
…………迷惑をかけて、すまなかった。今日は、それだけを言いにきたんだ。」
ユージーンは小さな声でそう呟き、スーツの胸元から何かを取り出した。
……………これは?」

ギルは受け取ることもなく、視線で問いかける。
「シカゴに行っても応援してるよ。」
警戒するようにユージーンから受け取ったギルは驚いたように目を見開いた。
「!」
小さな箱の中には、綺麗な赤色をしたネクタイが入っていた。

…………俺は息子のお前に何一つしてやれなかったからな、それじゃあ、元気でな。」

ユージーンは踵を返し、去ろうとする。
待って!ユージーン!」

気付いたら私は呼び止め、ばっとドレス姿を彼に見せるように腕を広げた。
「ありがとう!これ、すっごくお気に入りになっちゃいました!」
できる限りの笑顔でユージーンにドレス姿を見せつけた。

ユージーンも、きっと不器用なだけで……きっと心のどこかでは息子のギルを心配している。
―――
私はそう信じているのだ。

「あぁ。……ありがとう。お嬢ちゃんにやっぱりよく似合ってるよ。」
ひらひらと片手を振り、そのままユージーンは帰っていった。
……名前、あいつと何かあったのか?」
ギルは私の顔を覗き込みどこか不安そうな顔をしている。

ギルは格好つけたがりで、ううん、本当に格好着いちゃう人なんだけど。
お父さんのユージーンに関しては彼にとって最大の弱みだ………今もきっとそれは変わらない。

………隠していたつもりじゃないの。ごめんなさい。お節介だったと思う。後でちゃんと説明する。……今はパーっと楽しもう!」
ギルはきっと会いたくない、嫌な思いをするかもしれない。
そう分かっていても、お節介だったとしても…………
やっぱり生きているうちに、後悔のない様にしてあげたい。

自分勝手だとは思うが、私はこれくらいしかギルとユージーンにしてあげられることはないのだ。

………名前、」
ギルは私に何か言いたそうだったが、心配そうに様子を見ていたダンテがこちらへ走ってきた。
……何かあったのか?大丈夫かギルバート。」
「あ、あぁ………。何ともない。グラッツィエ、ダンテ。」
私たちは再びパーティーの輪の中へ戻ったのだった。

 

**

 

そろそろパーティーも佳境。
床には酔い潰れて寝ている人もいる。
ギルからたまに聞く話では、仲の良い人たちだけでお酒を飲むときはみんなハメを外して酔い潰れるらしいが………、今日は部下の構成員も数多くいるので自制しているのか、潰れているのは皆構成員ばかりだった。

………ギルバート、今日は僕たちファルツォーネも呼んでくれてありがとう。シカゴに行くまでにまだ時間はあるよね?今度は僕達だけで呑みなおさない?…………うちのカポがどうも寂しそうでね。」
「勿論だ。いつでも誘ってくれ!……お前たちのためならいつでも良い酒を用意するぜ。」

近くのテーブルで乾杯しているニコラとギルの会話を聞きながら、私も何杯目かのワインをグイっと喉へ流し込む。
……今日は、すごく、呑んでるね?」
オルロックは隣でジュースを飲んでいるようだ。
まだ十代のくせに………本当はめちゃめちゃお酒強いくせに、こういう天然で可愛いところが歳上キラーだと思う。
今日はリーにもランにもフェイにも会えたし、レオにも会えた。

……
もう満足すぎる。今日は来て本当によかった。
みんなと離れるのは寂しいけど、私はそれでも恋人のギルに付いていきたい。
………でも本当はさびしい。」
リリィとももっともっと話したかった。
そう思いながら近くのテーブルにあったワインを空になったグラスに注ぐ。

……え、その、大丈夫?」
「ん?、呑みすぎって?今日くらいいいの!」
オルロックは心配してくれているのだろう。
今注いだばかりのはずなのに、ぐいっと傾けたワイングラスの中身は気付けばもう空になっていた。

また、トクトクとボトルを傾けてグラスに注いでいく。
「え、……さすがに、もう………やめたほうが!」
パッと、静止するようにオルロックに優しく腕を掴まれ止められた。

………寂しい。みんなに会えなくなるのは………
……名前……?」
「でも、それでもギルについていきたいの、彼の役に立ちたい。」

オルロックの静止を振り切り、また喉へと流し込む。
頭がふわふわして何を話しているのか自分でも分からなくなってきた。

名前、顔も、その、肌も赤くなってる………。本当にその辺にしておいた方が……!」
……オルロックはいじわるね。」
え、えぇ………っと。」

もうお酒が回って何が何だか分からい。
空になったグラスに再びワインを注いでオルロックに差し出す。
「オルロックは呑んでないじゃない。ジュースと………交換しましょ?」
「おれは……お酒は……その、」
………呑まない?」

そっか、なら―――とワイングラスをまた一気に流し込もうとした時、ふと、グラスを持っていたはずの右手が軽くなった。
「シニョリーナ、呑みすぎだ。」
ワイングラスをギルに取り上げられた。

「オルロック悪い。無理矢理呑まされなかったか?」
「え、あ、いや……おれは、大丈夫。」
オルロックはぶんぶんと頭を横に振った。

「大丈夫じゃない!……私が。お酒返してギルバート。」
私は腕を伸ばしワイングラスを取り返そうとするが、ギルは「ダメだ、この辺でやめておいた方がいい」と私が背伸びをしても届かない位置までグラスを持っていく。
………君ってそんなにお酒弱かったっけ?」
……………ニコラ?私はザルよ。」
ニコラが私を見て楽しそうに問いかけてきたが、私の返事にはなぜか苦笑いを溢した。

…………?」
……シニョリーナも酔っているみたいだし、みんなももう酔い潰れて寝てしまっているし、このまま朝になったら起こして帰らせよう。今日はこの辺でお開きってところかな?」
「そうだな。……それがいい。」
ニコラもダンテも酔い潰たファルツォーネの構成員を眺め、うん、と頷き合っていた。

ヴィスコンティの構成員も老鼠の構成員も潰れて寝てしまっている。中々見れない光景だと思う。

……私は、もうちょっと呑みたい………。ダメ?」
「ダメだシニョリーナ、それにしても珍しいな。今日はどうしたんだ?」
ギルはどこか心配したような顔で私を覗き込む。
いつもは余り酔わないのだが今日は違う。

もう二度と会えないかもしれない皆との時間、それに何よりさっきの私のお節介はギルを傷つけてしまったかも反省していてーーー。ユージーンに気付いた時のあのギルの不安そうな顔が頭から離れないのだ。

「ギルはいつもそうやって!」
私はつい声を荒げて叫んでしまった、だけどーーーその先の言葉は続かなかった。

いっそのこと「ユージーンとのことは放っておいてくれ。」とか「どうしてあんたはユージーンと俺を会わせようとするんだ」と怒ってくれればいいのに。
そうすれば、私もごめんなさいって言えるのに。

……………っぅう。」
急にボロボロと涙が溢れてきて、止まらなくなった。
………なっ……!?」
ギルがワイングラスをその辺のテーブルに置き、「名前?」と涙を指で拭ってくれる。

……あ~あ、ギルバートがシニョリーナを泣かせちゃった。」
ニコラは楽しそうに鼻歌を歌いながら新しいお酒を手に取りテーブルから離れていった。

………っふ。……ごめんなさい。……ぅう。」
ボロボロ涙を流すものだから、ギルがそっと肩を抱いて人のいないテラスの方へと連れて行ってくれた。

テラスへ着くとギルは私にスーツのジャケットをそっと掛けてくれた。
そのままテラスの椅子へ促されるままに私は座る。

……大丈夫、じゃあないよな。……そうだ、水貰ってくる。」
ギルがホールへ戻ろうとするから私は立ち上がって後ろからギルを抱きしめた。

「っと………名前?」
ギルの気持ちもわからないわけじゃない!でもどうしても!すれ違ったまま、このままサヨナラはしてほしくなくて…………、でも、いきすぎたお節介だった!……ごめ、なさ……
さっきのギルの顔を何度も思い出し、後悔していた。

これは完全に酔っているのだろう。
いきなり何を言い出すんだと思っているに違いない。

振り向いたギルは私の顎に指を掛け、引き寄せそのままーーー。
…………!」
優しくキスをされた。

………あんたが謝る必要なんてない。あれでも一応父親だ。名前の言う通り、これが最後になるかもしれねぇし。最後に言葉を交わせて良かったよ。………相変わらず情けない姿を見せちまうことにはなったが。」
いつものように人好きのする笑顔を見せる。

………たまには恨み言言ってよ、私に。お節介だって、素直に言っていいのに。」
涙は相変わらず止まることなく、ギルの優しい指が拭ってくれる。
「世界で一番愛しい俺の恋人に俺は恨み言なんて1つもねぇな。ましてやお節介だ、なんて思ったこともない。」
………うぅ」
ギルは困ったように笑ったが、「少し待っててくれ、すぐ戻る。」
そう言ってホールへ戻ってしまった。

呑みすぎた―――。分かっている。
ブルローネから離れるのが寂しい。みんなと離れ離れになるのが寂しい。
ギルに付いていくと決めたのは私なのに。優しい彼は私の答えを待ってくれていたのに。―――でも寂しいものは寂しい。
それに、そんな彼に私はあんな顔をさせてしまった。
ぐるぐる、頭の中が落ち着かない。

その時、ガラッとテラスの扉が開き、水の入ったコップと何かの鍵を持ったギルが戻ってきた。

………ほら、水だ。飲めそうか?」
コップを優しく手渡してくれる。
私はコップを受け取り、ゆっくり水を喉へと流し込んでいく。
―――それと、今日はもう休もう。」
「休むって………、ヴィスコンティに帰るの?」
そう聞くとギルはひら、と手に握られていた鍵を揺らしてみせた。
「このレストランの上階はホテルになってるんだ。………部屋に行って今日はもう休もう。………な?」

こういうところも全てが優しい。
きっと今、水を取ってくる時に無理を言って一部屋借りてきたんだろう。お見通しなんだから。
………う、ん。」
頷くと、私の肩にかけてくれていた彼のジャケットは、ドレスの足元にかけ直し、そのまま横抱きにして颯爽とホールを通り抜け、目的の上階のホテルの部屋へと上がっていった。

 

**

 

…………迷惑かけて、ごめんなさい。」

ホテルの部屋へ着くと、ギルは優しくベッドへと下ろしてくれた。
「こんな迷惑ならいつでも大歓迎だ。……もう少し水飲むか?それとも着替えるか?吐きそうなら手伝うぜ。」
ギルはベッドに腰掛け、私の様子を確認しながら背中をさすってくれる。

………大丈夫。頭がふわふわするだけで、身体は全然大丈夫。」
きっと寝ればすぐに酔いは醒める。そう思ったが、着替えなんて持ってきていないし自分はまだドレスを着たままだと思い出した。
「あ、でも……、このドレス、ユージーンからの貰い物だから、皺になる前に着替えた………

………そのドレス、あいつから貰ったのか?」
ハッと我に帰る。しまった。口が滑った。後でゆっくり話そうと思っていたのに……
怒るでもなく、咎めるでもなく、ギルは私の言葉を待っていた。
ついこの間、ヴィスコンティにドレスが届いたの。ユージーンから私宛てに……。」
「成程な。貰ったドレスを着た姿を、あいつに見せたかったってこと、か……。」

…………………ごめんなさい。もしかして今日のパーティーのことを知ってドレスを送ってくれたのかと思って、念のため持ってきてたんだけど……。その、黙って他の男の人からもらったドレスを着るなんて、良くないよね………。」

今日は謝ってばかりだ。
お酒のせいで余計なことばかりやらかしている、…………もうしばらくお酒は飲みたくない。

「そうだな。なら、俺が脱がせてもいいよな?」
ギルは私が着ているドレスを丁寧に脱がせ始めた。
一応確認はしてくれるものの……有無は聞いてくれないようだ。

背中に手を回し、慣れたようにファスナーを下ろす。
それだけでこのドレスは簡単に脱げてしまう。
…………あっ」
………綺麗だ。」
素っ裸になった私の胸元へキスをする。
丁寧に胸元へいくつか痕をつけていく。

…………や、ギルも………脱いで?」
あぁ。」
ギルは自分のシャツを、スーツを、脱いでいく。
いつもは脱がせてくれ、なんて言うんだけど酔っている今日は気を遣ってくれているのかもしれない。

…………まだ、許せないよね。」
裸になったギルの眼帯へ手を伸ばし、そっと外す。
大人になった今でもはっきりと残っているこの傷。
この傷をつけた張本人がユージーンだ。
マフィアのボスなんてやっていても、ギルも人間だ。
そっと、傷跡を撫でるとギルは誘われるように片目を閉じた。

……あいつのことは、きっと、一生許せないと思う。でも……、それじゃあダメだよな。あんたの言う通り、後悔はしないようにしておかないととは思ってる。」
ギルは肩を竦めながら、どこか情けなさそうに笑った。
「ううん。いいと思う、それで。簡単に許せるはずなんてない。ギル、……あなたはマフィアのボスだけど、あなただってただ1人の人間だし、ただの男の人だし。大人びて見えるけどそれが年相応でしょ。…………あ、私の方が年下なんだけど。」
ふふ、と少し笑うとギルはぎゅう、ときつく抱きしめてきた。

…………………ギル?」
「愛してる、名前………こんなに情けない姿は見せたくなかったんだが、あんたの前ではどうも、マフィアのボスっていう面子は、どうもなくなっちまうみてぇなんだ。」
少し腕が緩んだのを確認して、片手をギルの頬に添え、ちゅとキスをする。

………聞いて、ギル。私ね、ブルローネを離れること、正直寂しい。みんなと会えなくなるのは悲しい。でも、あなたについて行きたいって気持ちの方が強いの。………………それなのに、天秤にかけるまでもなく私の答えはすでに出ているのにそれでも、心は揺さぶられてしまうの。」
ギルは真剣に私の話を聞いてくれている。
お互い裸でする話ではないだろうけど

……ギルが情けないって言うのなら、私なんてもっともっと情けなくて意気地無しの女に決まってる」
ギルの瞳が真っ直ぐ私を捉えている。

「ギルは……逃げなかったじゃない。決めたら最後までちゃんと向き合ったでしょう?ギルはやっぱり世界で1番の私の恋び、っ」
その先の言葉は、深い深いキスによって続けることはできなかった。

「っふ……………ん、………はっ」
……あんたはいつもそうやって、俺のことを甘やかす………ッ」
大好きな、恋人を……甘やかしちゃ、ダメなの?」
甘く口内を侵されながら、私はギルを軽く睨むように見つめた。

……………ダメじゃ、ない、な…………。」
ギルは照れたように頬を赤らめ、キスをしながら私の胸を弄る。
…………ギル」
……?」
私が上体を起こしギルの胸を押し、ベッドへ寝かせる。

「私、あなたが思っているより…………、ギルのことが好きだと……思う。」
私はそのまま、大きくなっているソレに手を添え、ペロ、と舌を這わせた。
ッ!…………名前…?」
ギルは驚ていたが、止められるわけでもなく、私の頭を優しく撫ででくれた。
そのまま舌を這わせたり、舐めたりした後。
ぱく、と意を決して加えた。

………ッ!、………無理しなくていいんだぞ?」
…………してな、い。きもち、い?」
上下に動かしながら、ギルの顔が見たくてチラ、と顔を見た。
ギルは今までに見たことないような顔で、頬を赤く染め、愛しそうに目を細め、眉尻を下げ……………今にも溶けそうな顔をしていた。

……っん、………んぅ………おっき……
口の中いっぱいを使って精一杯気持ち良くなってもらいたくて頑張るんだけど……、体格もいいギルのソレは大きくて
どうやっても全部は入り切らない大きさだ。
「なぁ、名前……………イヤ、じゃなければ、このまま………
ギルがいつもとは違う小さく控えめな声で尋ねてきた。

限界が近いんだなと察した私は優しい声で伝えた。
「うん。中に出して?」
……ッ、やけに素直だな。酔ってるせいか?…………いや、俺もッ………酔ってるのか。」
そのまま上下に動かしていると、それが一際ビクと震えたタイミングでビュルビュルと口の中に吐き出されていった。
ドロッとしていてアルコールのような苦味が口の中いっぱいに広がる。

……………すまねぇ。不味いだろ、俺の手に吐き出してくれ。」
ギルが手のひらを出して背中をさすってくれるが吐き出す気などさらさら無い。

ごくん。

……………………は、」
ギルは驚いたとばかりに目を丸くし、私を見た。
……吐き出すわけないでしょ、大好きな恋人の………なのに………
私はギルと目を合わし、ほら、と舌をベーっと出した。
全部飲んだ、と伝えたのだ。

「~~~~~~ッ」
ギルは歯を食いしばったように何かを耐えた、が。
先ほど吐き出したはずのソレは………もうさっきと同じ大きさを取り戻していた。

というか……さっきより大きいような気がする。

……………いきなり入れてぇところだが、流石にな………
ギルは一人で何かを呟き、私の秘部に手を伸ばした。
「やっ…………ひぁ……………
グチュ、とまだ触られてもいないのにトロトロになっていることが分かる。
ギルの指を容易に受け入れ、中で離さない、と絡みついているのが自分でも分かる。

「なんだ………、俺の咥えて感じてたのか?」
「や………そんな恥ずかしいこと、聞かなッ………
ギルは嬉しそうに目を細めたかと思うと、私のことをそのまま押し倒した。
「先に言っとく。今日は……覚悟してくれ。」
……え、覚悟って……………んああっ」
もうずぶずぶに濡れそぼっていたソコを容赦なく一気に突き上げられた。

「あッ………いきな、りっ………あんっ……あっ」
本当に容赦がない。いきなり激しく突き上げられ、身体は急な刺激に耐えられず簡単に上り詰めてしまいそうだ。
「あっ、あっ、そこ…………んっ」
……あぁ。ここだろ?…………好きだよ、なッ」
ギリギリまで引き抜いたかと思うと、私の弱いところを狙うかのように一気に最奥、根元まで押し込んだ。
「ふぁああああんっ」
その刺激に耐えられず弓形に背中が反り、ビクビクと体が麻痺を起こす。

………っはぁ、………んあっ」
目の前がチカチカする。一気に白く染まっっていく視界。
まだイッたばかりだというのにギルは腰の動きを止めるつもりなどないと言うように、私に背中を向かせ、四つん這いにさせ後ろから何度も何度も打ち付けてきた。

「あっあっ………んんんっ」
…名前は、バックも好きだよな。奥まであたるからか?」
背中にちゅ、と幾つもキスを落としながら奥へ奥へとゴツゴツ打ちつけられる。
「やぁ………も、だめ………っあんっ、変、なっちゃい……そ」
後ろから抱きつくように下から突き上げられ、逃げ場がない。
この快楽から逃げられる術が―――ない。
………変になっちまえ。名前、愛してる。これからもずっと―――俺の隣で一緒に生きてくれ。」
プロポーズのような言葉を耳元で囁かれ、子宮がきゅうっと締まるのがわかった。
………中、出していいか?」
んっ………責任、取ってね…………?」

シカゴ行きを決めてからというもの、実はもう避妊具を使っていない。
私も彼と一緒に生きる覚悟を決めたのだ。
―――もう迷いなどない。

「当然、だろッ?………
より一層激しく打ち付けられ、子宮の中へと再びビュルビュルとソレが吐き出されていくのを感じる。
「っあ………中、出て…………んんっ」
…………ッ」
ギルは一滴も残さないと言うように、腰をゆるゆると振り、全てを中へ吐き出す。
……………ねぇ、ギル」
………どうした?」
「このまま、抜かないで…………?」
………………え、」
顔だけ後ろに向けると、意図がわからないと言ったギルの顔が見える。

「ギリギリまで蓋、してて。零したくない、ギルの………
「~~~~~ッ、わざと言ってんのか?ソレ………
呆れたような、照れてるような、ギルは汗で濡れた前髪をかき揚げ、私の腰を掴んだ。
………………え?」
私の中に入ったままのソレがむく……と大きくなるのがわかる。
………やっ、待ってギル………違うの!そう言う意味じゃ………
………………元々一発で終わるとは思ってなかったんだが、まだまだ止まらねぇもんだな。」

ギルはどこか自分で感心したように腰をグッと引き、また突き上げた。
「今日は……色んな体位で楽しんでみるか?たまにはいいよな?」
「もっ…………、もうっ……………ううっ……
優しく背中に手を回され、身体を起こされた。
正面を向かされ、ギルの上に跨った。
……や、待って、ほんとに力入らな………
「あんたは動かなくていい。飲んでくれたお礼……ってわけじゃねぇけど…………。今日は意識が飛んじまうくらい、愛したいんだ。」
サラッと怖いことを言って退けたギル。

…………失神するまでってこと?待って、そんなのしたことないから………、こわ……
………なら、初体験。…………だな?」
下から上に突き上げられ、ギルは器用に腰を動かし始めた。
片手は背中に手を添えられ、片手では胸を弄られ………
感じている私の姿を楽しそうにギルは見ている。
……やだ、はずか…………しいっ…………見な………いでっ」

息も絶え絶えに抵抗の言葉を口にするけど、ギルは全く聞く気はない様だ。
………俺がこんな顔させてるって思うと……、クるもんがあるなぁ……。」
より一層大きさを増していき、繋がっているソレが満足して私が意識を飛ばすまで彼は行為を夜通し続けたのだった。

**

…………名前。起きてくれ、あんたの寝顔も最高なんだが………今はその瞳の輝きが見たい。」
…………んっ」

頬に手を添えられる感触を感じ、意識が浮上する。
昨日の今日で思わず身体がぴくりと反応してしまい、甘い吐息がこぼれた。
ゆっくり瞼を持ち上げると………
おはよう名前……なんだ、朝から誘ってんのか?」
……………え?」
頭がじんわり覚醒していく。
そうか、昨日パーティーのあとホテルに運んでもらい…………
視線で時計を探し、時間を確認する。
針が差しているのはもうお昼過ぎの時間だ。

…………えっ」
「よく眠れたか?………昨日はその、無理をさせちまったからな。」
ガバッと起き上がると、裸の私と裸のギル…………
ベッド横のサイドテーブルにはルームサービスの朝食が用意してあった。
「あんたの好きな紅茶を用意してある。………朝ご飯は無理に食べなくてもそうだな。ゆっくり準備して、屋敷に戻ってから食べてもいいな。」

サッと血の気が引いていく。
酔っ払って、そのまま恋人と過ごして嫌な予感が頭をよぎる。

「ごめんなさい!ギル、仕事は?私のことは置いていっていいから………
私のせいで仕事ができない、なんて一番嫌だ………と申し訳なさそうに伝えた。

「昨日からあんたは謝ってばかりだな?……今日は元々全員に休みを取らせてある。俺のところも、他のファミリーの部下も酔い潰れてるだろうしな。」
あ、それもそうか……。とホッと肩を撫で下ろす。
ブルローネのマフィアがこれだけ酔い潰れていたら………マフィア同士のいざこざも流石に起きないか、と。

…………あ、あの。」
……ん?」
ギルはズズッとコーヒーを啜った。

……………今日、今日もう一度ギルがくれたドレスを着るから…………、それを着て………抱いてほしいの。」
…………………なっ………………
ギルは心底驚いているんだろう、びくりと大げさに身体が動いた。

………
ギルは心を落ち着かせるようにコーヒーをまた一口飲んで、テーブルに置いた。

………これは私なりの、ケジメっていうか…………。昨日は別の男性から貰ったドレスを着たままーーー、」
あれ?なんか間違ってる?と首を傾げギルに問いかけると、ギルは困ったようにため息をこぼした。

「気持ちは最高に嬉しい。有り難くその気持ちも体もいただく。―――でも昨日の今日は流石に名前の身体が持たないだろ?」
や、でも。………そっか、それもそうだった。」
昨日はあんなに夜通し激しく抱かれたのだ。
少し眠ったとはいえ、もう………とっくに身体は限界を迎えているだろう。

……っくく。俺の恋人は本当に世界で一番強くて綺麗で……愛しくて堪らないな。」
ギルはクツクツと喉を鳴らし、楽しそうに笑う。

……………なにそれ、褒められてる気がしないんだけど。」
いいや、褒めてる褒めてる。……それに、昨日は言いそびれたんだが、ユージーン、あいつはきっと父親ぶったことでもしたかったんだろうな。……あんたのドレス姿、喜んでたと思うぜ。」
………うん。」
それは良かったと、私は肩の力が一気に抜けたのを感じた。

「あともう一つ。俺のことを、ヴィスコンティを選んでくれてありがとう。」
……………え?」
その言葉は予想してなかった、と私は目を丸くして聞き返した。

「絶対に、名前を世界で一番幸せにするって誓う。……別に永遠の別れって訳じゃない。気軽にとは行かねぇだろうが、旅行がてらブルローネに帰ってきてもいいんだ。」
「あ…………。」
私が寂しい、と言ったからか……
と昨日の酔っていてゆるゆるだった自分のことを思い出した。

「酒に酔ってなくても、普段からあれぐらい素直に吐き出してくれると嬉しいんだが………。」
おでこをコツンと軽くぶつけられ、ギルは私に子供のような目線を向ける。
………う、ん………。」
「あんたのことはなんでも知りたい。……どんな些細なことでもいい。…………全部、聞かせてくれ。」
そのまま距離が縮まり―――、優しく、労わるような触れるだけの優しいキスをした。

 

**

 

「ねぇ、ギルバート?こないだのパーティー。あの後シニョリーナとどうだったの?仲直りは出来た?」
「あぁ、勿論だ。聞いてくれるか?それはもう激しい夜を―――
……………なっ!ギルバートお前まさかあんなに酔った状態で………!」
……男の口から聞く話ほど、気持ち悪いものはないな…………………。」
「楊が、それ………言う?」
数日後行われた、数人のメンバーでの呑み直し、と称された男性だけで行われたそれはヴィスコンティで行われた。
案の定、全員が酔い潰れ……………
酒癖の悪さに引きながらも、私とオリヴァーと唯一いつも通りだったオルロックの三人で全員を介抱したのだった。