ニルアド短編

止まらない熱と愛欲

「滉、朝だよ起きて」
…………………

何時に寝たかは定かではない。昨日は滉の部屋で夜中の2時を過ぎても、お互いに求め合っていた。………元々寝不足気味な滉ではあるけど、今日は特に起きそうにない。

「滉、起きて、遅刻するよ?」
私は一旦自室に戻り制服に着替え、まだ寝ているであろう滉の身体を揺さぶりながら声をかける。

…………起きて、」
なかなか起きない滉にちゅ、と軽くキスをした。

……名前…………!!」
薄くぱち、と瞬きをした滉は……、ハッと目を見開き起き上がる。

………ごめん、今何時……?」
745分。あと15分以内に降りなきゃ遅刻だよ」

…………寝過ぎた。」
「何度も起こしたのに。………昨日は遅くまで起きてたから疲れちゃってるんだよ。」
……急いで準備するよ。」

滉はベッドから立ち上がり、着替えていく。
引き出しからシャツを羽織り、ボタンを止めた………その手を止め、私の方へ振り返った。
………俺の勘違いかもしれないんだけど、さっき………もしかしてキスして起こしてくれた?」
……あー、早く着替えて。」
余計なことまで思い出そうとしているので、私はふい、と少し顔を逸らした。

…………起こしに来てくれてありがとう。おかげで寝過ごさずにすんだよ。」
シャツの上から上着を羽織り、着替えた滉は私を優しく抱き締め、唇を塞いだ。

っ、ダメ、………思い出しちゃうでしょ。今から仕事なんだからちゃんとしなきゃ。」
…………ごめん。朝こうやって起こしてもらえるのが、その嬉しくてさ。」
罰が悪そうにぱっと抱きしめていた腕を離し、眉尻を下げる。

「今日はぐっすり寝なきゃ………ね?」
つい、ふふと笑みが溢れた。
自分の気持ちをしっかり言葉で伝えるようになってくれた私の恋人は、前よりも表情が増えていて私は嬉しくなっていた。

 

**

 

いつも通り作戦室で栞さんから話を聞き、巡回へきている。
今日は、翡翠と一緒の地区を担当する当番だった。

…名前、最近力の方はどうですか?」
――え、特に何もなくいつも通りだよ?」
………よかったです。僕、能力に目覚めた当初は凄く精神が不安定になっていたから……だから、名前は大丈夫なのかなって心配だったんです。」
翡翠は安心したように笑顔で返してくれる。

私は昨年フクロウの一員となり………、能力に目覚め………………、超能力と呼ばれている「千里眼」が使えるようになったのだ。

――今のところはまだ自分の位置から100m程度という制限付きだが、建物や人、障害物など関係なく全て透けたように視認することができるのだ。

日々トレーニングをしながら少しずつ力に慣れていって…………、約1年ほど経った今では、慣れると便利なモノで、日常生活において密かに使っていたりもしているぐらいだ。

「ありがとう、翡翠。………去年に比べたら長い時間使えるし、視認できる距離もほんの少し広がったような気が………してるよ。」
……え!もう!?すごいです!」
翡翠は自分のことのように喜んでくれる。

フクロウで能力が使えるのは翡翠とツグミと私。
私たちはお互いに良く能力のことも話すし、お互いのことをよく心配している気がする。

「僕も少しずつではありますが、火種の調節が上手くいくようになってきて………
翡翠も嬉しそうに能力について離していると、その時遠くから叫び声が聞こえた。

「きゃぁぁぁ!喧嘩よ!誰かぁぁ!」
女性の叫び声に私と翡翠は顔を見合わせ、すぐに駆け出していた。

 

**

 

「大丈夫ですか!?………って、すごい人混みですねッ」
声が聞こえた方に走り出したものの、人だかりで何も見えず確認もできない。

――――、」
両目を閉じ、集中する。
すると色彩は鮮やかなのに透明度が下がったように周囲が頭の中に映し出される。
人混みの奥に見える景色を私は確認した。

「翡翠、喧嘩してるのは男性2人、学生……かな?警察はまだみたい。止めに入ろう!」

人だかりの中心には学生位の年齢の男性が2人、殴り合いをしていた。警察もまだ近くには来ておらず、翡翠は「分かりました!行きましょう!」と返事をくれ、私達は声をかけながら輪の中心へと割り込んでいった。

「僕たちはフクロウです!落ち着いてください2人とも!」
私と翡翠はそれぞれ男性を引き離す。
翡翠は私を庇ってか、男性2人の間に入りながら今にも殴りかかってきそうな男性を抑え込んでいる。

「こんな道の真ん中で殴り合っちゃダメですよ!」
「!?誰だよあんたら!離してくれ!」男性は私に凄んだが、私も負けじと男性の腕を引っ張り引き剥がす。

翡翠が抑え込んでいる方の男性は頭に血が上っているようで、まだ暴れ続けている。

力では負けてしまう、私は再度両目を閉じた。
―――翡翠!警察がもうすぐ来る!そこの曲がったパン屋さんのあたりに今いるわ!」
「了解です!ありがとうございますッ」
翡翠は視線だけ私の方へ動かし、引き続き暴れる男性を止めている。

「離せ!!俺はどうしてもあいつを!!」
「ダメです!!落ち着いてください!殴り合ったって何も解決しませんよ!」

……貴方も!ダメですよ。喧嘩はやめてください。」
ぐい、と私も抑えている男性の腕にさらに力を込めた。
「俺は元々急に殴りかかられただけで………別に喧嘩する気なんて………。なぁ、アンタ、どうして警察がそこまで来てるって分かったんだ………?パン屋ってここからじゃ見えないだろ?」

こちらの男性は私を見つめ、抵抗する気はないようだった。
私は念のために腕を掴んだまま………、答えた。

………この辺で喧嘩がある時は、大体いつもこれくらいで駆けつけてくれるんですよ。」
………………へぇ。フクロウってのはそんなのも把握してんのか。」
男は納得したのかしていないのか頷いたきり話さなくなった。

―――まもなく警察が到着し、男性2人は署へ連れて行かれたのだった。

 

**

 

その後はお昼を食べ、再び巡回に戻るも………和綴じ本は無し。
アパートへ戻るなり栞さんや皆から心配された。

警察からフクロウの2人が止めてくれた、と連絡があったらしい。

「おい、大丈夫なのか!?怪我は!?」
血相を変えた滉が私の両腕を優しく掴み、確認するように問う。
「滉、大丈夫だよ。反抗して凶暴な人は翡翠が対応してくれたから。」

……………怪我がなくて本当に良かった。」
安心したかのように強ばった滉の身体から一気に力が抜けるのが分かった。

名前さんの能力のおかげで、状況判断に迷わずに済みました!ありがとうございます。」
ぺこ、と翡翠は改めて私にお礼を告げた。
……そんな、翡翠が止めてくれたおかげだよ。」
私は手をぶんぶんと顔の前で振り、翡翠にありがとうと伝えた。

翡翠が一緒にいてくれて良かったよ。」
滉はそのまま会議室のドアノブに手をかけ、「じゃあ、お疲れ様でした。……俺、先に風呂入ってきます。」と言い残し出ていった。

………?」
いきなり風呂?とは突っ込まなかったが、つい首を傾げてしまっていた。

「滉、お前が帰ってくるまでずーっと心配してソワソワしてたぞ?」
「翡翠が一緒だからきっと大丈夫だと思うって声はかけたんだけど………
「もちろん!そこは男の僕が頑張るところですから!」
隼人とツグミが楽しそうにニコニコ声をかけてくる。更に言えば翡翠はなんだか違う意味で嬉しそう。

………え、何でそんなに皆楽しそうなの?」
栞さんまでもがふはっと吹き出し、笑っていた。

「あのクールな滉がこうも感情を表に出してるのが珍しいんだよ。……つい、可愛くってなぁ!」
「なるほど。」

2人きりの時ならともかく、皆がいるこの会議室で1年前とは別人の滉見たから………面白がっているのか、とすぐに納得できた。

……俺もまさかあんな滉が見れる日が来るなんて!ほんっとうに愛ってすごいよなぁ。」
笑顔でにっこり隼人は私に向かって告げた。

いたたまらなくなった私も「お疲れ様でした。私もこれで―――、」と席を立ち上がりドアノブに手をかけると、栞さんに呼び止められた。

「事件をこうして防いでくれるのは嬉しいが、無茶はするなよ?―――去年のこともある。心配してるんだよ滉も。」
……………はい。肝に銘じておきます。」

栞さんに言われた通り、滉には沢山心配をかけてしまっている。
扉を閉め、階段を上がっていく。

去年、稀モノ絡みでフクロウにお世話になることが決まったものの……、士官学校に志願するも女性は無理だと断られ、隼人や滉みたいにいざという時体を張れる訳でもなく、翡翠やツグミみたいに役立つ能力があるわけでもなく―――

無力感に苛まれていた時、百舌山という男が超能力について研究していると知り………自ら志願し超能力とやらの被験体になったのだ。

そして秘密裏に実験に通い…………、この「千里眼」という能力を手にしたのだ。
実験と言っても……血や体の組織を採取され、海外から入手したその能力と体外で適合したことを確認し、ソレを体内に戻され―――、能力に目覚めたのだ。
当時は慣れるまでの体の拒否反応や無意識に目を掻きむしったりして……上瞼に深い傷が少し残ってしまっていた。

私としては、こうやってみんなの役に立てるようになって………、正直後悔は全くしていない。

だけど、拒否反応は凄まじく、下手したらこの身体はどうなっていたかも分からない状況だったらしく………一連の事件が解決した後、自分から望んでやったことだったが、栞さんや皆からこっぴどく怒られた。もちろん、滉にも。

それ以来、滉は隠さず何でも気持ちを私に伝えてくれるようになったし、過保護にもなってしまった。
ちょっとした巡回の揉め事の仲裁でも―――、こうして心配されてしまっている。

気持ちを落ち着けるためにも、目の前の自室の扉を開け、お風呂場へ入ることにした。

 

**

 

「滉?…………晩御飯、食べに行かない?」
お風呂上がり、私は滉の部屋に訪れていた。

こういう日はいつも1人で部屋に閉じこもっていることを知っているからだ。

…………うん、すぐ準備するよ。」
遅れて帰ってきた返事に、少し不安になり鍵はかかっていない扉をそっと開けた。

………滉?」

部屋に入るなり感じる少し冷えた空気。
電気も付いておらず窓が開いており、カーテンが揺れている。

………どうしたの?考え、ごと……?今日のことだよ、ね。」

―――まぁ、少し。あんたはいつも自分から危険な場所に飛び込んでいくから……、仕事柄しょうがないのかもしれないけど……。」
もう日は落ちていて、月が輝いている。
ベッドに腰掛けながら見上げる滉はどこか泣きそうに見えた。

「どうすればいいのか、考えてた。あんな危ない目にはもう絶対に合わせないって決めたばかりなのに………、」

私はその言葉に申し訳なさを感じ、ベッドの側まで駆け寄る。

………今日は喧嘩の仲裁をしただけで、本当に何もなかったよ?翡翠だって、危険な方に回ってくれて私から遠ざけようとしてくれていた。」
………それでも、だよ。翡翠が仮に一緒じゃなかったとしてもあんたは喧嘩の仲裁に入るだろ。―――その力を使って。」
滉は窓の外の月から目を逸らし、私をまっすぐ見つめた。

仲裁には入るかもしれないけど、私じゃどうにもならなさそうだったら直ぐに助けを呼ぶか警察を大人しく待つよ。千里眼じゃ見えるだけで何にもできないし。」
…………そっか。俺が、心配しすぎなだけなのかな……。」
滉はそっと手を伸ばし、私の片目瞼の傷にそっと触れる。

―――滉、心配ばかりかけてごめんなさい。でも、私はもう去年みたいに1人で勝手に決めて行動したりしないよ。」
私は滉が優しく触れてくれるその手の上に自分のものを重ねた。

「今は―――、大切な恋人がいるから。ちゃんと相談するし、1人で勝手に決めないし、心配もかけるつもりはないよ。……心配するなとは言えないけど、信頼、してもらえるように頑張るね。」
あまりにも今にも泣き出しそうな顔で私を見つめてくるものだから、とびきりの笑顔で返した。

…………そっか。そうだよな。あんたは―――名前はそう言うよな。」
少し驚いた顔をしたが、滉はその後くしゃっと笑った。

 

**

 

あの後、何も話さないまま冷んやり入り込んでくる風と、きらきら輝いている月をじっと見つめていた。

私は痺れを切らして聞いてみることにした。
………ねぇ、お腹は空かないの?」
お腹は空いてるんだけど、今はこっちが欲しいって言ったら―――怒る?」
優しく腕を引っ張られベットの窓際に座る滉の上にまたがる形で膝をついた。

……………、怒らない。」
滉に跨った状態でそのまま、上から唇を塞ぐ。

なぁ、その、俺は嬉しいんだけどさ。……今朝から何でそんなに急に積極的なの…………?」
照れたように視線を少し泳がせながらも、その言葉はしっかり今朝寝ている恋人にキスをした私の行動を指していた。

……去年のナハディガルでの事件が解決した後、百舌山は逮捕されたし、お義兄さんのとのことも一応解決して―――、滉は表情豊かになったし、感情も素直に出してくれるようになったでしょう?」
……?、別に。俺はそんなつもりないんだけど………。」
「だから、私も欲しいものは欲しいって素直にちゃんと言おうかなって。変に誤解されてすれ違ったりしちゃうのは嫌だし。」

滉は目を細め私を見つめ返した。
……どういう意味なのか全く分からないんだけど
私の腰に手を回され、軽く引き寄せられた。

「私はきっと貪欲な女なの。やっと手に入ったこの能力も、大好きな貴方のことも―――、全部全部私の手中に収めておきたい。」
……………何だよそれ。まるで女王様みたいな台詞だな。」
まじめに告げた私を見て滉は少し笑った。

「素直にやりたいことをやって、伝えたいことを言葉にして、素直に生きて、大切に大切に守っていこうってこと。だから滉―――、私はもう1人で死に急ぐようなことはしないよ。」
―――!」
1人で勝手に百舌山にコンタクトを取って、勝手に被験体になって、たまたまそのタイミングで皆がナハディガルのオークションに乗り込んできて、鉢合わせて全部バレたあの時を思い出しながら―――苦笑いで言った。

……俺は口も上手くないし、誤解のないようにそのまま伝えることしかできないんだけど
………滉?」

何か考え込むように言葉を切り、視線を外したが、意を決したように再び私へ視線を戻した。

………正直、俺はあんたがフクロウから離れた方が安全なんじゃないかとか、その能力ももう使わないで欲しいとか沢山考えたんだけど………、」
その後に続く言葉は、何となく予想できた。
クールでぶっきらぼうだった彼は、こんなにも真っ直ぐに想いを伝えてくれるようになったのだ。

………俺はあんたの、その言葉を信じることにするよ。直ぐに心配するのを止めれるかって言われると………自信はないけど。」
………滉。」
―――まぁ、もう俺はさ?あんたを手放せないんだ。いや、手放すつもりもないが正しいかな。」

滉の髪をサラサラと指で弄びながら私は嬉しくなって笑顔で頷く。
―――うん。ありがとう。」
「愛してる。名前。」
「私も。………結婚しようね?滉。」

滉は呆れたような優しい顔をした。
そういうのは男から言うもんだろ……。」
「別にプロポーズじゃないんだし……、大丈夫でしょう?」
「いや………だからそういう問題じゃなくて…………、」
はぁ、呆れたと言わんばかりにため息をつき………

優しくベッドへ押し倒された。

あ。寒いよな。閉め「待って!」
滉が窓に手をかけようとしたが、それを制して止めた。

「毛布被っちゃえば大丈夫。………それに、今夜は月が綺麗だからこのまま…………シたい。」
私は素直にそう告げると「反則だよ……、それは。」と毛布を被った滉が覆いかぶさってきた。

…………ん、」
手際よく脱がらせていく衣服。
お風呂には入ったけど、ご飯を食べに行こうと誘ったのは本当だったから外行きの服を着ていたのだ。

……お腹空いてるのにごめん。流石に一回で止めるから………、ご飯はその後でも……待てそう?」
少し申し訳なさそうに問いかけてくる滉にふふ、と私は笑みをこぼした。

「私も滉のことを先に食べたい。」
……ッ!ほらまた……そう言うこと言うだろ……。」

下着を剥ぎ取られ、ベッドの下にそっと落とされる。

「滉とシてると………好きだなぁって気持ちが溢れてきて、止まらなくなる。」
滉の首元に腕を回し、引き寄せそのままキスをする。

………ッ、もしかしてさ、さっきから俺のこと煽ってる?」
…………ふぁっ………、ん………、そんな、こと……っ」

裸になった私の身体を優しく触り、合わさった唇はお互いの舌が絡まり合い、卑猥な音が静かに響いていた。

「ごめん、加減できないかもッ……

滉は私の制服で見えない部分に痕を残していく。
鎖骨、胸、お腹、太もも―――

……っ、あっ」

甘く吸い上げられるそれは、たまにチリッと軽く焼け付くような痛みを感じる。

「ねぇ………、私もつけちゃダメ?」
………え、」
驚いた滉の首元に口を近づけ、経験はないけど―――、見よう見まねで吸ってみた。

―――ッ」
少し声を詰まらせた滉に、パッと唇を離して「ごめん!痛かった?」と彼を見上げた。

「いや、全然痛くないよ。……ちょっと驚いただけ。」
自分の首をそっと触り「どう?………着いた?」と聞いてきた。

………あ、赤くなってる。………私のものって証拠、付けれた!」
「っはは!俺の方が嬉しいのに!」
付けられた当の本人より、付けた方が喜んでいるのが可笑しいのだろうか。彼は心の底から笑っているようだった。

「でもさ、今から私のものって証拠だけじゃなくて、………実際に名前のモノになるんだよ。」
滉はそう言いながら、嬉しそうに胸に顔を埋める。

……晩御飯食べに行けないかも………ね?」
………………それは…………そうならないようには善処するよ。」
私の胸をやわやわと触りながら、顔を埋める滉の髪を撫でながら聞いてみると、割と正直な返事が返ってきた。

………今日は余裕があるみたいだから、」
………………、あっ………

頭を撫でられたのが気に障ったのか、乳首を優しく歯で噛まれ、身体は反応してしまう。

そのまま太ももを撫で上げられ、秘部へと手が近付いていく。

………今ので感じた?」
耳元で囁かれ、身体はそれだけでビクッと反応してしまう。

ッ、……止められなかったらあんたのせいだよ。」

滉はその言葉通り、晩御飯を食べにいく頃にはもう22時を回っていて―――

遅くまで空いている定食屋さんに2人で行ったのだった。

 

**

 

「何だかここ最近毎日シてない?」
―――ごめん。もしかして、寝不足、体調に触ったりしてる?」

この時間は人は誰もいないため、小声でこんな話をしても滉は咎めずに聞いてくれるようだった。

「ううん。そんなことはない、んだけど。………毎日毎日、私で飽きたりしないのかなって。」

定食のお味噌汁を吹き出しそうになった滉が「………何を言い出すかと思えば、」とお茶碗を置き、ひとつため息をこぼす。

……ごめんなさい。食事中に変なこと聞いた。」
再び食事を再開しようとすると―――

「いや、答えは後で、なんて言わないよ。」
………え?」
……………飽きたりなんか絶対にしないし、毎日、その………新しい一面も見れてもっと好きになるっていうか…………。あんたの体は暖かくてすべすべしていて気持ちいいし、寝る時間を惜しんででも―――いや、これだとなんだか………
滉がまじめな顔で味噌汁のお茶碗を手に持ったまま答えるから、面白くて今度は私が笑ってしまった。

……寝不足になる原因を、新しく私が作っちゃってるってことね。」
―――そう、なるのかもしれないな。」

困ったように笑う滉と、この後アパートに戻り……………またお互いの熱は再熱するのだった。