ニルアド短編

一途な呪いは時に傲慢に

………ん、」
ふと、さしこんだ光に眩しさを覚え重い瞼を持ち上げる。
視界に飛び込んでくるのは、先日購入した医学書とレポート。

どうやら私は机に突っ伏して寝てしまっていたようだ。
光が差し込む窓を見やると、すでに朝日が登っていた。

「もう朝か………。」

パタンと開いていた医学書を閉じ、ぐぐっと両腕を上げ背筋を伸ばす。

『治癒』という超能力を持つ私は、フクロウで働いている。
治癒といっても細胞の活性化させる程度で一瞬ですぐに治る!なんてことはない。

私の超能力は滅多に使う機会もないし………、両親が医者、医療関係者だったため医学の心得があることから、ここのところフクロウでは主に医療担当、医療係なのである。

フクロウの仕事の合間を縫って、医学書を読み漁り勉強に耽っている――
レポートなんて書いても、どこにも提出はしないと言うのに。

―――これは、医者を目指して帝都大医学部に通っている恋人の累の影響だ。

 

**

 

――ということで、帝都大の図書室に稀モノがないか確認してほしいと帝都大から直々に依頼があった!」
ちなみに今日の話だ!――と。

朝、いつものように作戦室により、今日もいつもと同じ巡回をするはずだったが――、栞さんから発せられた言葉に空気が変わった。

「はいはい!俺が行ってもいいですか?」
隼人が椅子から立ち上がり右手を上げた。
……隼人、ズルい!」
ツグミが私も!と椅子から立ち上がるも………大学は男性しか入ることができない場所だ。

………まぁ待て隼人。確かに久世に行ってもらってその目で稀モノがあるか確認してきてもらいたいのが本音なのだが、今回実は、名前に行ってもらいたいと思っている。」
栞さんの言葉でみんなの視線が私に集中した。

「帝都大の教授が、フクロウで医療係をしている者がいるという話に興味を持ってくれてな?図書室の本の確認をしてもらう代わりに医学書や資料などを特別に見てはどうか?と話をもらってな。さすがに女性は入れないから、男装してもらう……というのが必須条件にはなるが。」

「えっ…………行きます!行かせてください!」
医療の本だけでの勉強は限界がある。

大学に女性は入学することが出来ないし、
私自身女学校にも行っていたが……、当時この治癒の力が急に使えるようになり、怖くなって自暴自棄になり……自主退学してしまったのだ。

医学の独学にも限界があり丁度思い詰めていたところ、こんな吉兆はない。
身体がつい前のめりになってしまっていた。

「そうなると、名前が一番適任だな。」
滉も小さく頷き、翡翠も「フクロウの要とも言える医療係はあなただけですからね!」と笑顔で返してくれた。

「ええー、俺も行きたかったけど……、そう言われると名前に譲らざるを得ないなぁ〜。」
隼人もどうやらOKしてくれたらしい。

………でも、男装って……、カツラをかぶるとか?」
ツグミが私を見ながら首を傾げた。
「うーん、私服でも大丈夫ならサラシを巻いて着物とか来て…………髪は結べばいけるかな……!?」

私は自分の身体を見ながらそう答えた。

体のラインはオーバーサイズの服を着ることで隠せるし、胸の膨らみだってサラシを巻けば大丈夫。
髪が長い男性も少ないとは言え稀にいるし……、と期待を膨らませながら考える。

「そういえば、先方からは、フクロウの制服だと目立ちすぎるから、むしろ私服で着てくれと言われたな。」
栞さんが大学は洋装和装どちらも入り混じっているからな、男性用の着物でも良いぞ、と返してくれた。

………名前は美形だから男でも女でも全然違和感ないと思う!前に帝都で人気だった錐合蓮みたいにさ!女の子感はどうしても隠せないだろうけど女っぽい男もたくさんいるし………………あ、可愛いも格好いいも持ってて凄いって意味で!」
隼人……本人は言い方が気になったのか少し焦って言い直した。

褒めて……くれてるんだよね?ありがとう。と苦笑いしながら隼人に返しておいた。

「みんなのためにも、意義ある時間にして参ります!」
そう張り切ってみんなに伝え、自室に戻り早速男装を始めた。

 

**

 

早速無事に男装を済ませ、帝都大の正門前に来ていた。
図書室までの場所は栞さんに地図に書いてもらったので行き道は分かる。

ここが……、累も通っている帝都大学。
素敵な場所なんだろうなと、まだ正門だが感じ取れる。

「フクロウの苗字さんですか?私は大学の図書室で司書をやっている白野です。いやぁ〜助かります。今日はよろしくお願いしますね!」
門のすぐそばで優しそうな男性が私に声をかけてくれた。

「はじめまして!こちらこそよろしくお願いします!しっかり確認しますね!」
そう答えると、男性はゆるりと来た道を翻し、「図書室まで案内します!」とゆっくり歩みを始めた。

 

**

 

案内された図書室。
さすが帝都大学。本の数が凄い………が、
私たちフクロウも使っている図書館には及ばない。

「和綴じ本はこちらになります。」

白野さんが既にまとめてくれていたのか、カウンターの上に和綴じ本がまとめて置いてある。

「わぁ!ありがとうございます。これ持って帰って確認してもらいますね……。」
「お願いします。もし他にも怪しい本があれば遠慮なく持って帰ってもらえれば嬉しいです!」

「分かりました!」

橋の棚からザッと和綴じ本や怪しい本がないか確認していく。
今は朝の9時、広いとは言えこの様子なら昼過ぎには終わるだろう。

……あ、そうだ。苗字さん!」
司書の白野さんがカウンターから声をかけてくれた。

「聞いてるよ。フクロウで医療係をしてるんだって……?本の確認が終わったら、医学部に行って資料室や資材室、好きなように見せてあげてって言われてて………
ハッと白野さんは時計を見遣り、言葉を続ける。

「しまった。私は昼から別の予定があって………、申し訳ないんだが、地図を用意しておくから医学部の資料室に向かってもらえるかい?」
信頼できる生徒に案内を任せておく!と白野さんは申し訳なさそうに笑った。

「見せてもらえるだけで嬉しいのに。ありがとうございます!お気遣いなく!」

そこから暫く無言で本をひたすら調べ続けたのだった。

 

**

 

結果、怪しい本は白野さんが纏めてくれていた和綴じ本以外に怪しい本はなさそうだった。

本の確認が終わったのは午後12時過ぎ。
思ったよりも早く終わった。

白野さんに手書きの医学部への行き方のメモをもらい、図書室から医学部へ向かっているわけなんだが………

…………ここ、どこだろう…………………。」

さすが日本最高峰の帝都大学、こんなに広いのか、と驚きが隠せない。

医学部にしかおいてない専門の医療書とか模型とかサンプルとか………、外部の私に見せてくれるなんてこんなチャンス二度とない!と思ってワクワクしながら向かっているわけだが……

段々と足取りは重くなっていく。

………誰かに聞いてみようかな。」

幸い今はお昼時。
どこを歩いても生徒がたくさんいる。

……………あ、あの!」
はい?」

目の前を歩いていた細身の男性…………、に声をかけてみた。
「すいません、ここに向かいんたいんですが……道を教えていただけませんか?」

勿論いいですよ!と男性は親切そうに私の持っているメモを覗き込んだ。

「医学部の資料室か………。?、何だこのメモ分かりにくいな」
………え、いや私が方向音痴で―――、」

「いやいや、これじゃあ………口で説明しても分かりにくいと思います。ここからそんなに遠くないですし案内しましょうか?」
「えっ………いいんですか?!ありがとうございます!」

そう言って細身の男性の後ろについて数歩歩いた時―――

二人組で歩く男性の内、一人の男性と目が合った。

―――累だ。

仕事とはいえ、累は何も知らないから………、女の私がここにいると知ったら驚くだろう。……というか、今男装しているんだった。

でも流石にバレ……………

…………すいません、」
「え?」

累は私の前を歩く男性に声をかけた。

「すいません、僕の知り合いが迷子になっていたようで……。丁度探していたんです。」
「医学部の鷺沢さん、あぁ……!そうだったんですか!」
細身の男性は何か気付いたように私に振り返り、「それなら医学部の生徒に任せたほうが安心ですね、僕はこれで……!」とニコッと笑い逆方向に歩いて行った。

……あ!ありがとうございました……!」

歩き出していた男性に向かい頭をペコリと下げる。

静寂が一瞬訪れるも、直ぐに累の声が聞こえた。
「で、どうしてこんなところにいるの?もしかして、仕事でここに?」
………る、累……………。」

隣にいた仁科くんが「鷺澤、知り合いか?」と問うも「そうなんだ。悪い仁科、先行ってて。」とニコニコ廊下を促すが顔は笑っていない。

どうやら仁科くんは私に気付いていないようだ。
いつもと服装が違うだけで………、意外とバレないもののようだ。

「言っておくけど、僕は仁科と違って気付いてるからね?名前、ここは帝都大学だよ。仕事だとは思うけど、ここには男しかいないんだから一人で歩くのは危ないよ。」
声のトーンを下げ、累は私の耳元に近づき囁く。

………だから男装しているんだけど、」
「甘い!分かる人が見れば一目瞭然だよ。多分だけど、案内していたあの男も君が女性だって気付いていたんじゃないかな。」

フクロウではみんなにこれなら行けると太鼓判を押されたのに……と考えていると、私が持っているメモを手に取った。

「これ……、司書の白野さんが書いたメモ?やっぱり分かりにくいよね、この人の字って…………君は医学部の資料室に行きたいの?」
累は全てを把握したかのように、私の返事を待った。

「う………うん、累、これから授業あるよね?…………口頭で大丈夫だから道だけ教えてもらえない?」

累にフクロウで最近医療係をしているとか、医学の勉強をしているなんて累には恥ずかしくて伝えていない。
理由も不純というか………………、いや、これでも医者の娘なのだ。いざという時役に立ちたいんだけれど………、累に憧れて勉強を始めたなんて………、言えない。
だから………、勉強のためにそこへ行きたいなんて…………絶対に言えない。

遠回しに累とは離れようとしたことに彼は気付いたらしい。

…………。丁度教授の休養でね、夕方まで休講になったところなんだ。」
……………………え、」
「だから僕が案内するよ。名前をこんなところで一人には絶対にしたくないからね。」

………あ、ありが……とう。」
累に連れられ、再び資料室を目指すことになった。

 

**

 

先ほどいた場所からそう離れていない場所に資料室はあった。

「着いた。ここだよ。」
ガラッとドアを開けると…………、そこには専門的な医学書や模型などが置いてあった。

図書室にも医療書は置いてあったが……、それよりももっと専門的な………本だ。

…………わぁ!」
部屋に足を踏み入れ、思わず感嘆の声を上げてしまった。

そっと扉を閉めた累がガチャリ、と鍵を閉めたのがわかった。
「こんな専門的な資料室にある医療書まで稀モノかどうかの確認をするの?」
累は不思議そうに私に向かって聞いている。

―――、累は稀モノではない何か別の理由があると分かっていて聞いている。

………累、こ……、これは仕事、だから………その、」
そうだよね、僕には話せないことの一つや二つ…………名前にだってあるよね……。」
累は仲間はずれにされた子供のように拗ねた。

……………………
これはいつもの累のやりくちである。
私がこういう拗ねた彼に弱いことも分かった上でやっている。

……………累、笑わ…………ない?」
「勿論。絶対に笑わない。」
予想外の返答だったのか、少し驚いた顔をした後に頷いた。

私は累と目は合わせないまま、医学書の棚を開き、本を手に取って行く。

「今、フクロウで医療係をしてるの。だから、稀モノがあるかの確認ついでに医学部の資材を好きに見てもいいって―――
話し終える前に、るいが前のめりになって言葉を遮った。

「え!?君が…………?もしかして医学の勉強?そんなことなら僕がいくらでも教えてあげるのに!」
思わず振り向いて累と目を合わせてしまった。
驚いているのか……いや、嬉しそうに彼は続けた。

「ご両親が医者だったっていうのは前に君から話してくれたよね。だから、名前が医療係になるのはなんとなく分かるんだけど……、どうして急に?」

累は追求をやめない。
私のことになると、全部知りたがる彼は………、納得する答えが返ってくるまで追求を止めない。

「あ………いや、………、その、私に何かできることないかなって………考えた時に……、その……………まだまだ本当に簡単な手当ぐらいで………。」

言葉に詰まりながら、頭をフル回転させる。
棚から取った本に視線を戻し、ページをめくろうとする…………が、私の手の上にそっと累の手が重なる。

……フクロウの図書館でね、猿子さんが教えてくれたんだ。」
累が私を後ろから抱きしめ、耳元で囁いてくる。

「なッ………!?」
私の反応を楽しんでいるかのようにクスクス笑いながら累は続ける。
「彼女、あんなに熱心に医療書ばかり借りて行って………、それを見かねた朱鷺宮さんがフクロウに新しく医療係を作って彼女を任命したみたいだよ〜良かったね!…………って。」

…………ま、猿子さんっ………!」

僕にも話していると思ったんだろうね、と驚く私をよそにニコニコ話を続ける。

「猿子さんの話によると、医療係ができる前から君は熱心に勉強してたみたいだよって……………。僕は君から話してくれるのを待ってたんだけどなぁ。」
「や、待って待って、る………「それに、」
累は私の言葉を待たずに重ねた手をぎゅっと握ってきた。

名前が手に取ったこの本、応急処置とかっていうレベルの本じゃない。本格的な処置の本だよ。……………本格的に医者を目指してるわけでは……ないんだよね?どうして勉強を始めようと思ったの?」

この鷺澤累という男は―――、本当にタチが悪い。

どこまでわかって聞いているのか、何も分からない。

…………恋人の僕にも話せない、隠し事?」
ひぁっ!」
耳朶をはむ、と柔く噛まれた。

「ちょ………、ここ、資料室でっ………
「大丈夫。ちゃんと鍵はかけてるよ。」
累は悪びれる様子もなく即答する。

視線を彷徨わせる私を見かねてなのか……、累は小さくため息をついた。
「僕としてはこのまま……、ここで君と秘密を作ってもいいんだけど………。」

後ろから抱き締められた形のまま、着物の襟からするっと手を入れられる。

………成程。サラシを巻いてダボっとした着物を着て男装しているつもりなわけか。」

「累………っ」

今日の仕事は午前中で終わり。
あとは好きに過ごしていいぞと栞さんに言われていたことを思い出し………、仕事中ではないことが幸ではあるものの、こんなところでこんな行為は宜しくない。非常に。

「累、私は一応仕事でーーーー、」
弄っている累の手を掴み、振り返ると累は色欲を灯した瞳で私を見ていた。
「知ってる。仕事は午前中で終わりなんだよね。司書の白野さんが案内を頼んだ医学部の生徒…………、それって僕のことだよ。」

首にキスを落とすと同時に、サラシがハラリとほどけ、着物の中で腰までするすると落ちた。

……っあ、」
既に反応しているその突起に累は躊躇いなく触れる。

「待っ…………、えっ?」
急に抱き上げられ、累は私を軽々と持ち上げる。
資料室のソファーに優しく下ろされ、押し倒される。

「バレバレの男装でこんな所にきた君が悪いんだよ、逃がさない。」
……、う、嘘でしょ累……?」

帯びを解き、着物をたやすく開き…………、肌が露わになる。サラシを巻いていたおかげで…………下着は下しかつけていないのだ。

………ダメだな、これ、刺激が強すぎて僕、どうにかなっちゃいそう。」
まじまじと私を見つめながら累は太腿を撫で上げ、下着を脱がして行く。

「資料室………、誰か使用しにくるんじゃあ………、」
「その心配はないよ。医学部の資料室はいくつもあるんだけど、ここはずっと使われてない空き部屋みたいなところなんだ。……そんなことより、まだ話してくれる気にはならない?」
…………累、もしかしてわざ…………
と、累に唇を塞がれ、その先は言葉にはさせてもらえなかった。

「っふぁ……、ん、だ、………ダメっ」
「ん…………、本当にダメ?」

口ではダメと言いつつも、身体は素直に累を欲しがってしまう。こんなところで、しかも累の大学で、絶対にダメなのに―――

あっ、…………も、話す………、からぁっ」
瞳に涙が浮かぶ。
羞恥によるものか、快楽によるものか………もう自分でもわからない。

「うん。それは勿論、後で聞かせて?………今は君が欲しいな。」
既にトロトロになった秘部を触り、「わっ……、いつもより凄いね………こんな場所だから興奮してるの?」なんてわざとらしく囁く。
最初からそのつもりだったのだ、累は。
私から話す、と言質を取った上で、このまま行為を止める気など―――ない。

グプ、と音が聞こえた。
「ほら、もう僕の指……、飲み込んじゃったよ」
気付いた時にはキュウと締め付ける私の中。

「あっ……、やっ………、る、るいっ………、んんっ」
「ここは帝都大、君も知っていると思うけどここには男しかいないんだ。…………、知らない男にこんなふうにされたらどうするつもりだったの?」

今日の累が性急なのは、…………そういう意味も込められていたのか、と今更ながらも理解した。

そ、んなこと、こんな、累みたいなこと………、みんながする訳じゃ………
「そんなことないよ。……男はみんな危ない。……君は警戒心が足らなさすぎる。」

…………ごめんなさ、」
話してある間も止まらない彼の指、
何度も身体を重ねていると……、さすが帝都大医学部の首席。
研究心もあり、覚えも良く、気持ちいいところばかりついてくるのだ。

「あっ、……………ん、る、るい………、ダメ、だ……、め!」
「イっていいよ」
必死に腰をくねらせ、与えられる快楽から逃れようとするも…………累に「逃げないで、」と腰を抑えられ逃げることができない。

――そのまま、直ぐに絶頂してしまった私だったが………、休憩させてもらえる暇もなく、彼を受け入れたのだった。

 

**

 

その後、累の知り合いだったということで……
特別に大学に行かなくても累を通して貸し借りができるようになったのだった。

恐らく累が何か口添えをしてくれたんだろう。
おそらくは………二度と帝都大には危ないから来るなと言う牽制も込めて。

私は和綴じ本を持って一旦アパートに戻り、朱鷺さんに本を預け………………、明日は非番のため累の住むアパートへと来ている。

「紅茶も飲んで一息ついたところだし……早速なんだけど、僕は君が勉強を始めた本当の理由が聞きたいなぁ。」
累のベッドの上で彼に後ろから抱きつかれながら、私は昼間と同じ質問をされているのだ。

また昼間みたいなことをされては堪らない。
私は少し考えたが………ゆっくり口を開いた。

……………憧れなの、」
…………え?」
観念したように私はボソボソと声にならないような小さな声で呟く。

「累に…………、憧れたの。」
……………………

累は目を見開き驚いていた。

「医者になろうと頑張っている累に…………、憧れて…………、私は、その、フクロウにいるから医者にはなれないけど、貴方に少しでも近づけたらなって……………んっ!?」
後ろから顎を少し引かれ、累が唇を掠め取ってきた。

……そんな理由だったなんて!僕、嬉しくてどうにかなっちゃいそうだよ
累が再び唇を合わせ、急なそれに驚いて逃げる舌を絡め取られて行く。

っ、あっ
逃げても無駄だと分かり、私も彼を受け入れると、累は私を優しく押し倒した。

「大学でも言ったと思うけど、いつでも僕が教えてあげる。一緒に勉強、なんてのもいいかもしれないね。…………ほんとうにもう…………、このアパートに君のことを閉じ込めておきたい。」
累が刹那げに私に懇願するような目を向ける。

「そ…………、れは…………、」
「うん。僕が早く医者になって君のことを迎えに行けばいいって分かってはいるんだけど………………、こうも可愛いと焦ってしまうんだ。」
私が返答に困っていると、累は少し肩の力を落としながら答えてくれた。

「焦るって…………累、私は貴方だけのものなんだから。そんな心配は不要だよ?」
ッ、君ってほんとうに…………うん。どんな名前も全部全部、僕だけのものだよ。その代わりと言ってはなんだけど、頭の先から爪の先まで髪の一本も残さず僕の全ては………全部君のものだからね。」

側から見れば狂気……いや、呪いとも取れる戻れる言葉がもしれない。
ずっと誰かに必要とされたかった私に取っては―――――、最高の呪いなのだ。

昼間の熱を思い出してまた疼きだす身体に…………、素直に従おうと思う。
触れたくて、触れたくて堪らないのは彼だけではなく―――――私も、同じなのだから。