ニルアド短編

正直者と愛の懺悔

「ツグミ、お疲れ様!」
フラマンローズとかかれたお店の前でフクロウの制服を着た同僚であり友人のツグミを見つけ声をかけた。
名前ちゃん!お疲れ様!」
ツグミも笑顔で手を振りかえしてくれる。

フクロウで働いている私たちは、お互いの巡回場所が近い時はお昼休みに待ち合わせをして、お昼ご飯を食べるのだ。

扉を開けて店内に入ると「いらっしゃいませー!」と明るい声が響き渡る。
フラマンローズ、という美味しくて人気のご飯屋さんだ。

席に案内され座ると、ツグミが慣れた様子でメニューを開いて見せてくれる。

名前ちゃんは何食べる?」
「ん〜、コロッケ定食にする!」
「美味しいよね!私はオムライスにしようかしら。」

お互い注文を定員さんに伝え、ご飯を待っている間、アパートではしにくい女子の会話が花開くのだ。

名前ちゃん、今日はどうだった?」
「稀モノはなし!平和でいい日になりそう。」
……私も同じ、稀モノはなし。」
ツグミはしょぼんと眉尻を下げた。

フクロウは魂が宿った本を回収している組織。
ツグミは稀モノが視える、という特殊能力を持っている。

そんな私も実は特殊能力、念動力が使えるのだ。
その言葉通り、念じれば「物」を動かすことができる。

「ところでツグミ、累くんとは最近どうなの?」
「えっ……
分かりやすい、ツグミは一気に赤面した。

「累とは昨日も、その、会っていたわ。」
「へぇ帝都の医大生のくせに余裕なんだね〜さすが累くん。順調そうで何より。」
幸せそうなツグミを見ているとこっちまでニヤついてしまう。

名前ちゃんは……、その、最近隼人とはどう?デートしたりしている?」
「うん。最近は特に事件もないし、暇だからね。ご飯行ったりしてるよ!」
ツグミは鷺沢累くん、私は尾崎隼人と恋人同士なのだ。

「お待たせしました〜!」
店員さんがニコニコとコロッケ定食とオムライスをテーブルの上に置いてくれた。

二人でいただきます、と手を合わせながら今日も楽しいお昼ご飯が始まる。

「そういえばツグミって……華族なんだよね?」
?うん。」
「華族って……、許嫁とか、いないの?」
ツグミがスプーンをお皿に置き、目線が下に落ちた。
しまったと、私はすぐに言葉を続けた。

「ごめん!今の質問は無かったことに……、」
「ううん。違うの。本当はフクロウに来る前に婚姻する予定だったの……。」

……え?」
「その……、八代汽船の息子さんと結婚する予定だったの。……でも、フクロウで働くことになって、今は累もいるし、その話は無くなったんだけど、」

「(八代汽船……!?)」

八代汽船の息子、いわゆる社長の息子、なんだが………
その八代汽船の息子は私の恋人である「尾崎隼人」のことだ。

隼人は、一から自分で頑張りたいという理由でわざと「尾崎」と名乗っているのだ。

名前ちゃん……?」

「あっ、そうなんだ……、累がいるから、結果良かった……、ってことなのかな?」
「そうなの、今となっては良かったのかな。あの時の久世家のことを考えたら本当は結婚するべきだったんだろうけど……。」

そんなの隼人が知らないわけがない。
というか、そんな話聞いたことがない。

――隼人は何か私に隠し事をしている?

「ごちそうさま、オムライス美味しかった!」
ツグミが食べ終わり両手を合わせた。

私も両手を合わせ、「午後も頑張ろうね!」とお互い担当の地区へと足を運んだのだった。

 

**

 

何となく、だが予想はしていたのだ。
フクロウの上司である栞さんと隼人が「公園の姫」という話をしていた、という風の噂を聞いたことがあったから。

私はそんなあだ名はついているはずがないし、きっと別の誰かだろうとは思っていた。

年齢はツグミより三つ私の方が上なんだけど、フクロウに入ったのは私の方が後。
ツグミに聞いてみたこともあるけど、ツグミも知らない風だった。

あの用意周到で欲しいものは絶対手に入れるやり手な隼人が知らずに「久世家」の娘と婚姻するはずがない―――

公園の姫って、もしかして隼人が好きだった女の子とかそういうこと?
それって…………、ツグミのこと?

ずっと頭の中をグルグル回っていて仕事に身が入らない。
しっかり巡回しなきゃ、私情を持ち込んじゃダメだと思うものの、次の書店までは距離があるから、どうしても考え込んでしまう。

私は意を決して、巡回するお店の順番を少し変えた。
早々にスッキリして、仕事に身を入れよう!だから、杙椰さんのお店に先に行こう!と決めたのだった。

 

**

 

「杙椰さん!お疲れ様です!」
お洒落な雑貨屋さんの扉を開け、お店の主に挨拶をする。

「よぉ、お姫さん。悪いが今日も和綴本は無いんだ。」
キセル片手に笑顔で返してくれる店主、杙椰さん。

杙椰さんはこの帝都に知り合いも多く、情報網も広く、物知りなのだ。
いつもはフクロウとして気になっている話題や事件に繋がりそうな話を聞くのだが、今日は巡回ついでに個人的な話を聞くと決めていた。

「杙椰さん、あの………一つ、質問しても良いですか?」
「ん?なんだ改まって、一つと言わず幾つでも質問していいぜ?……きっちりお題はもらうがな。」
…………お題、払います。お金で。」

クイナさんははぁ、とため息をこぼす。

「お金じゃなくて、一晩お姫さんのことを貸してくれるだけでいいんだがなぁ。」
………それで本題なんですが、」

杙椰さんの揶揄いは慣れたものでサラッと受け流した。

「例えばですよ?、例えば、一目惚れした好きな女の子がいたとします。……でも実際に恋人になったのは別の女の子でした。…………って男の人としてはあるあるですか?」

…………………。」
ぽかんと口を開けているこんな杙椰さんは久しぶりに見た。

………え、ないですか?やっぱり……?」
やっぱり隼人は今でもツグミのことが好きなのだろうか、それともツグミには累という恋人ができたから………、諦めて別の女にしたってことなんだろうか。

考えれば考えるほど黒いモヤがかかってしまう。

「お姫さん、それ……、隼人のことだろ?」
「っえ、違いますよ!」

確信しているのか、迷わず「隼人」の名前を出されたので咄嗟に否定してしまった。これでは肯定しているのと同じだ。

「まぁ……、ありかなしかで言ったらアリだな。といっても、一目惚れした女のことがどうでも良くなるくらい心を持っていかれる女が現れたとか……、あり得る話だと思うぜ?」
「そそうなんですか……。」

「あんな馬鹿正直な男はそうそういねぇよ。俺なんかに聞くより本人に聞くのが一番手っ取り早いだろ。」
…………聞けませんよ、怖くて。」

さすが杙椰さん、全部お見通しってわけか。
私はまっすぐ前を向いてしっかりと歩ける隼人やツグミとは違うのだ。最悪の答えを聞いてしまったが最後、後悔しても後悔しきれないことは目に見えている。

「姫さ……、」
「杙椰さん、ありがとうございました!……勇気が出たら聞いてみます!」

お礼を告げ、私はお店を後にした。
杙椰さんも世話焼きで優しいから、きっと「俺がどことなく探ってみてやろうか?」なんて言ってくれると分かっていたから、あえて言葉を遮って店を出たのだ。

流石に、隼人が悪いわけではないのに探りを入れるなんて―――、違うと思って。

 

**

 

「栞さん!お疲れ様でした!今日は稀モノありませんでした!」
ビシッと作戦室にいる栞さんに笑顔で伝える。

「お疲れ!平和が1番だな!ゆっくり休んでくれ。」
「ありがとうございます〜!」

作戦室には私と同じ同僚の翡翠がいた。
翡翠の担当した地区では和綴じ本があったようで、ツグミの稀モノかどうかの確認待ちらしい。

ツグミは自分がフクロウで役に立てることは少ない、と悩んでいるようだが、稀モノかどうか判断が出来るなんて……ウチにとっては喉から手が出るほど欲しい能力に間違いない。

私も超能力、念動力が使えはするのだが、なかなかに不安定で……、制御が難しく、命が危険となるようないざという時しか使わないようにしている。

否、使えないのだ。
まだまだ鍛錬が足りないということなのだろう。

そんな私に比べれば、ツグミはよく頑張っていると思う。

そんなことを考えながら作戦室を後にし、アパートには帰らず制服のまま温室へと足を運んでいた。

 

**

 

この音質はあまり誰もこない………らしい。
私も含め、たまに誰かが物思いに耽っているくらい……だと思う。

ソファーに腰を下ろし、空を眺める。

日中もこの温室は綺麗だが、夜もなかなかに綺麗なのだ。
緑は見てるだけで癒されるし、静かだし、誰もいないし。

………はぁ」

今日は一日疲れた。
ツグミは優しくて強くて女の私から見ても素敵だなって思う、大切な友達。

……だけど、そのツグミが「公園の姫」だなんて笑えない冗談。勝てない、私では。

今も、こんなことをグズグズ悩んでなんかいないで、隼人にズバッと聞いて、私は念動力の鍛錬をすべきなのである。

………、こんな力要らないのに。」

ソファーにごろんと横になり、花壇の近くに置いてあるバケツやスコップ、ジョウロに向かって手のひらを伸ばし、念を込める。

ブワッと浮き上がる道具たち。

、」

今は夜で暗いので、万が一誰か来たら心配なので、なるべく自分の近くに浮かせた道具たちを引き寄せる。

そして、人差し指をクイっと上に向かって上げる。
動かしているものをそれぞれバラバラに動かす練習だ。

バケツだけを上に向かって動かしてみただけなのだが
「えっ……!」

バシャァッ

…………!」

見事に頭の先から爪先まで水を被ってしまった。

考え事をしながら、鍛錬なんてするから………、バケツに水が入っているかもなんてそんな簡単なことが頭から抜けていた。

…………………………はぁ、」

能力が急に使えるようになってなんて役立たずなんだ、と余計に自分を卑下してしまう。

転がる空っぽになったバケツの横に、スコップもジョウロも地面に下ろした。

「誰かいるのか………?」
温室の入り口の方から聞き慣れた声が聞こえた。

…………、」
隼人だ、聞き間違えるはずがない。

バケツの水の音を聞きつけて駆けつけたのかもしれない。

…………ごめん、隼人、私。」
起き上がり、ソファーに腰掛けたまま温室の入口の方を見た。

名前…?って大丈夫か!?びしょびしょじゃん!」
隼人は走って私のそばに駆け寄ってくれる。

「何があったんだよ……、ん?これ、もしかして
地面に転がるバケツと綺麗に並んだジョウロとスコップを見つけ理解したのだろう。

「能力の練習……、してたのか?」
隼人も制服のままだったようで、躊躇いなく自分の上着を私にかけてくれた。

……うん。ごめんね!ちゃんと片付けて帰るから」
大丈夫、じゃないよな。何かあったんだろ?」
目線を合わせるように私の目の前に跪いてくれる。

「え?何もないよ〜。ただ、もうちょっと上手く使いこなせるようになりたいなってだけ!」

隼人は少し視線を彷徨わせ、迷ったように告げた。
「さっき杙椰さんに会って、今日名前の元気がなかったって聞いて………、部屋に行ったんだけど居なかったから探してたんだ。」
あ、あー。そういう……こと。」

やっぱり優しい杙椰さんはお節介をしてくれたらしい。

「どこまで……聞いたの?」
「え?いや、元気がなかったったってだけで……、詳しくは何も聞いてないよ。」

じと、と疑いの目を向けるも………、おそらく本当に聞いていないんだろう。
聞いていれば、隼人なら直ぐに何かいいにくるはずだ。馬鹿正直だし。

「隼人、横、座って。」
……わかった。」

私の隣に静かに隼人は腰掛けた。

「よし、馬鹿正直な隼人に聞くことにする。」
「え…………なんか俺、怒られるようなことした?」
不安そうに私の顔を覗き込んできているであろう、隼人の目を見ることはできなかった。

「今でもツグミのことが好き?」
………………え?」

度肝を抜かれた、その表現がこんなに合う場面はないだろう。

「公園の姫、八代の息子、婚約相手」
ボソボソと言葉を続けると隼人は焦ったように、私の手を握ってきた。

「待った待った!どこでそれを……!いや、隠してたわけじゃないんだけど……、そうだよな。俺が悪い……よな。」
「ツグミが…………累と恋人になったから?」
「違う!!誤解しないでくれ!……そんなわけないだろ!」
隼人は叫ぶように否定してくれる。
まるで私の言いたいことは分かったと言うように。

一目惚れだったのは本当。でも……名前がフクロウに来て……、気付いたらこう、なんていうか全部持っていかれたっていうか……。」
……………っ、」
クイナさんが言っていた通りだ。

「明るくて、強くて……前向きな女性が好きでしょ?」
「なに、言って
「こんな超能力なんて持ってて、化け物で卑屈でネガティブな女っ」
自分で言ってて悲しくなってきた。
涙がじわりと瞳に溜まる。

……それ以上言ったら俺、怒るぞ。」
言葉とは裏腹に優しく肩を抱かれ、隼人の胸の中に収まった。

あ、ごめ……、その、嫌いに、な………ならないで、」
「ならない。ぜーったいならない。」
隼人の腕にさらに力がこもるのが分かる。

「不安になっただけなの、こんなことを言いたかったわけじゃなくて、」
何で伝えればいいのか分からず、溢れてくる言葉をそのまま伝えていく。

「私で………いいのか、って」
名前じゃなきゃダメだ。俺は名前がいい。」

迷わず言葉をくれる。馬鹿正直で嘘はつけない男、それはもう身に染みて知っているつもりだ。

不安にさせて、ほんっとうにごめん。先に久世とのことは説明しておくべきだって思ってたんだけど、いくら説明されてもめちゃくちゃ気にするんだろうなぁ……って思ったらなかなか言い出せなくて………、」
…………うん、」

「最初は女学校時代の久世、公園の姫なんて言われてた時に、遠くから眺めてるくらいだったんだ。その………、一目惚れしてたのも本当なんだ………、でも、」
抱きしめられていた腕の力が弱まり、隼人は私の頬に手を添えた。

「フクロウに新しく入ってきた女の子がさ、「私が守るから隼人は後ろに下がって!」なーんて言って、超カッコいい力で前線で戦ってくれてさ………、情けないことに、俺が踏ん切りつけられず立ち往生してた俺の妹の自殺の件も調べてくれてさ……、犯人まで辿り着いちゃったワケですよ。」
…………

「そんなのさ、俺の心なんて全部掻っ攫って持ってかれるに決まってるじゃん。」
……!」

隼人が唇を重ねてきた。
ここは温室で……一応外だと言うのに。

……ん、……は、隼人………、まっ
………待てない、」

何度も弄られた口内を深く深く犯していく。

「こんなんじゃ、俺の愛は全然伝わらない。」
………なっ、」
止まることなく与えられるそれに、濡れていたはずの身体も体温が上昇していく。

………夏とはいえ、このままじゃ冷えるよ。もっかい………お風呂入ってくる?」
隼人の艶っぽい声に、身体がびくりと震えた。

……ん、これくらい大丈夫。もう、乾いた。」
熱を孕んだ隼人の目を見て、私は目が反らせない。

「俺のこと、こうやって全部受け入れてくれるところも好きだよ。」
………え、」
ソファーに優しく押し倒され、隼人は制服のスカートの裾から手を差し込んできた。

「今だって、こんなところで恥ずかしい、とか、温室でこのままそんなことするなんて………って考えてるだろ?……でも、隼人ならいいや。……って最後は受け入れてくれる。」
私のことは熟知しているかのように言葉を続ける隼人。

「それだけじゃない。たくさん悩んでちゃんと答えを出すところも、誰にでも優しくて誠実なところも、………本当は怖がりのくせに去勢はって強くあろうとするところも……、本当はネガティブなくせに明るくあろうとするところも……全部全部、好きだ。」
………!」

太ももを撫で、そのまま下着の紐に指を引っ掛け、スル、と下ろされる。
「こうやって泣いたり弱気な言葉をちゃんと伝えてくれるようになったのも……、最近だろ?俺、頼りにされてんのかななってこれでも自惚れてるんだけど……、」
蕩けたような顔で隼人は笑う。

「あ、でも不安にさせたのは俺なんだった。……ダメじゃん、俺…………。」なんて眉尻を下げて笑う。

―――隼人ってズルいよね、」
………え。」

「普通は信じ難い話でも、馬鹿正直な隼人くんが言うと何か……信じられます。ズルい。」
「それって褒めてる?……まぁ、隼人君は素直で誠実で嘘はつかない男だからな!」

にっこー、と蔓延の笑みで返事が返ってきた。

……なぁ、でもさ?」
隼人は首筋に顔を埋め、ブラウスの下から手を入れ、柔らかい部分へと手を動かす。
………っあ、……ん、なに?」

「杙椰さんに俺とのこと相談するほど仲良かったっけ?」
口を尖らせ、拗ねているんだという雰囲気が痛いほど伝わってくる。

………隼人さっき、元気ないってことくらいしか聞いてないって…………
…………あ、」

しまったと、すぐ顔に出た隼人に思わず吹き出した。
「っあははは!」
……そんなに笑うところなの?」
咎めるように隼人は動かす手を一瞬止めた。

「ほんっと……、杙椰さんの言う通り、始めから隼人に直接聞いておけば悩む必要なんてなかったのかも。」

「それは、そうなんだけどさぁ……。こんな時に他の男のなま「大好き、隼人。私以外の女の子はもう……、見ないで、約束。」
我ながら恥ずかしい台詞を吐いていると思う。

真っ直ぐに正直にぶつかってこられると、私も真っ直ぐに正直に返さなくては……、隼人に対して失礼だ。
誠実ではないしフェアではない。

「ほら、そういうところ、俺が馬鹿正直なら、名前は馬鹿誠実ってところじゃないか?そういうところに持ってかれるんだって……自覚ないだろ?…………愛してるよ、名前…。」

夏の夜中は心地よい温度まで気温が下がり、
お互いの熱を溶かすことに熱中していて――

気付けば朝日が登っていたのだった。

 

**

 

「昨日はごめん………、その、流石にこんなところでがっつくべきじゃなかったよな……。」
……外でするのも悪くないなって思ったよ?」
………えっ」
しょぼんと項垂れる隼人に私は笑顔で本音を口にする。

……私、隼人となら何処でもいけちゃうのかもしれない。」
ふふふ、と笑いながら乱れた衣服を整えながらソファーの隣に座る隼人の肩に頭を乗せる。

………はぁ〜。やめてくれ、そう言うこと言うとすぐつけ上がるよ、俺。」
「いいよ、つけあがっても。」

いつもは真っ直ぐで私の方がたじだじになるのに、こういう時は隼人も照れるらしい。なんだか可愛い。

「日常的に私の能力が使えるようになったら………、もっとみんなを助けられる。…………早くもっと使えるようにならなくちゃ。」
目の前に手をかざし、何か動かそうと力を込めようとしたところ、隼人が手を絡めてきた。

―――仕事の相棒としても、俺も負けてられない。俺達だって、皆おんなじ事考えてるよ。俺も、アキラも、翡翠も、久世も。」
―――、」
「栞さんだって、燕野だってそうだよ。…………みんなを助けたいって、少しでも役に立ちたいって焦る気持ちもみんな同じだよ。何も能力を持ってる#ノア#や翡翠、久世だけが特別じゃない。」
……、ま、またそう言うこと言う……。」

じわり、と瞳に涙がたまる。

「今日仕事が終わったら……、フラマンローズで何か甘いものでも食べて帰るか!」
…………うん!」

隼人は私に気を遣わせないように、「新しいプリン・ア・ラ・モードがすっげぇ気になるんだよなぁ!俺まだ食べてなくてさぁ!」なんて言いながら、楽しそうにソファーから立ち上がる。

「もう朝だし、アパートに戻ろう、立てそう?」
当然のように私に手を差し出す隼人に思わず苦笑いが溢れる。

ふふ、今日は手を借りる。」
いつもは自分で立てる、とお礼を言うけど…………、今日ばかりは隼人の手を借りておく。

こんな自分を好きだと言ってくれる人がいるのだ、自分自身のことを奢らず、謙虚に、誠実に。
なるべく卑屈にはならず…………、頑張っていこうと思う。