呪術短編

甘い薬には甘い毒を

「うわぁ…………、こんな場所来たの初めて……。」
美男美女、イケてるおじさまに、イケてるおばさま

豪華な内装に煌びやかな装飾、高そうなご飯に見たこともないワインのボトル。
東京で一、二を争う高級ホテルの建物で行われるパーティーとはこんなにも凄いものなのか、と場違い感に打ちのめされていた。

ここに集まるのは皆、この国の権力者やその関係者ばかりらしい。
ドレス派手すぎたかなと不安だったけれど、これぐらい胸元も背中も開いたドレスを選んで良かった。
逆にこの方が若い女性達の中だと馴染んでいるかもしれない。

派手すぎない落ち着いた赤色にしたのも正解だったなとほっと一息つきながら、参加者全員に配られたワイングラスを持ち直し、一口だけワインを喉へと流し入れた。

任務できているとはいえ、一口も呑まないのは変だと思われるだろうなぁと苦手なワインを無理矢理流し込んだ。

 

 

―――遡ること数日前、

………え?私がパーティーに潜入ですか?」
「そうだ。呪霊関係でウチに依頼があったわけなんだが…………、」
珍しく歯切れが悪く、言葉に詰まった夜蛾学長。
私は小さく頭を傾げた。

………昔、テロがあった場所らしい。今のところはまだ、呪霊が確認された訳ではないのだが
「え、可能性があるから念のためにってことですか?」
「ああ。そのパーティーに集まるのはこの国の権力者お偉いさんばかりで念のために、とウチへ依頼が来た。」

先日、特級術師に無事昇級した私に早速任務らしい。
それはとても嬉しいのだが、まさか呪霊が未確認にも関わらず特級呪術が派遣されるなんて考えられる理由は一つしかない。
昔テロがあった場所となれば死者や怪我人もかなりの数だろう。―――そんな場所だから念には念を押して、特級の呪霊が出る可能性を考慮したのだろう。
この国の権力者が集まるパーティーなど、万が一のことがあっては困る。

でも学長。わざわざ私がパーティーに潜入する必要はあるんでしょうか………SPとして混ざって待機とかでも

「それなんだが―――、一応他の呪術師が下調べに行ったものの、特に何もなかったそうだ。もし呪霊が潜んでいるのであればテロが起きた時と同じ状況、同じタイミング、同じく壇上でスピーチが始まった時に現れるのではーーと踏んでいる。」
……なるほど、さらに念には念を押していつでも対応出来るように潜入ってことですか。」
「そういうことだ。」
私と学長は目を合わせながらため息を吐く。

「そんな会場使わないようにすれば良いのに
「日本の首都、東京で一、二を争う高級ホテルの建物にあるホールだから変わりは無いのだろう。」
これだから権力者だの偉い人が考えることは意味が分からない。
権力者ともなれば少なからず呪霊について知っている人もいるだろうに。

……で、なんで私なんです?そんな大層なパーティーだったら悟の方が適任では?」
「大物の権力者たちには元々優秀なSPがついている。だが、呪霊があらわれて騒動になり、会場で火災や緊急事態が起こっても対処できるようにと上からのご指名だ。」
なるほど、と頷いた。

私の術式は、体内にあるものを~千倍にして放出することができるもの。
簡単に言うと体内にある体温やら水分やら酸素やら静電気なんかを呪力と混ぜることで体外に出す事ができる。
人間には色々な成分が体内にあるので、掛け合わせによれば熱風とか炎も出せる。
呪霊を祓うだけではなく、災害にも対応しやすい便利な能力なのだ。

まぁ、力の元となるものは自分の体内にあるものを使用するので……必要以上に使えば簡単に死に至ってしまう力だ。

単純かつコントロールが難しい代物。
でも生まれながら持っていたこの力のおかげで私は特級術師になれたのだろう。
万が一に備え、カバー力が広い私が選ばれたのも納得がいく。

「あと……悟は一応、五条家として客で呼ばれているそうだ。…………面倒くさがって出席はしないと思うが。」
学長はさらに大きなため息を一つ。
私も悟さんならそんな面倒臭いとこ絶対に行かないだろうな、と苦笑いを返した。

「なるほど…………分かりました。任務は遂行しますけど、そんな豪華なパーティーに一般人の私が馴染めるかは期待しないでくださいね?」

 

**

 

そんなこんなで、いざ当日、噂のパーティーに参加しているのだが――
事前に何人かの写真も見せてもらい、パーティーのスケジュールも把握している。
不安になることなど今のところはないのだが、こんな場所では知り合いなど一人もいるはずがなくどうしても寂しさが襲ってくる。

広いホールの隅に行き、ワイングラス片手に会場内を眺めていた。
その時、近くに歩み寄る男性の姿を捉えた。

「あの……、すいません、……あの!」
……………え、私、ですか?」

歳若そうな……、爽やかな男性が話しかけてきた。
まさか自分へ話しかけてくるとは思わず反応に少し遅れてしまった。

「あ、そう警戒しないで。僕もこんなパーティーには不慣れで、この通り貴方とと同じくホールの隅っこへ。」
「そ、そうなんですか。…………お揃いですね。」
私の隣に立ち、「乾杯……しても?」と男性は控えめにワイングラスを差し出した。

……はい、是非。」
私もワイングラスを差し出し、乾杯をした。

「それであそこにいる人が僕の父なんだけど、」
…………え、あの人は有名な議員では……?」
乾杯してから、彼は身の上話を始めた。
私より二つ歳上だと分かり、二十七らしい。

彼は会場の真ん中あたりにいる人を小さく指差し、自分の父親だという。
目を凝らしてその人物を見ると、なんと有名なテレビでもよく見かける議員ではないか。

…………………、」
その時男性が横で少し私のワイングラスを覗き込んだ。

……………?」
ふと男性に視線をやると、「全然呑んで無いね?」と一口しか呑んでいないワインに目をやった。
「ちょっと知り合いがいて誘って貰ったんですが、私は一般人なのでちょっとこう言うのは苦手で
変に嘘をついても怪しいか、と正直に応えておいた。

「そうなんだ?僕も普通に会社経営をしているだけで、政治にはそんなに興味はないんだけどこういうところに連れてこられてね………。」
普通に会社経営って、どこが普通なんだどこが、と心の中で突っ込みを入れておいた。
…………苦労されているんですね。」
議員の息子も何かと大変なんだろう、とワイングラスに残ったワインを飲み干し、近くのテーブルに空いたワイングラスを置いた。

「では私はこのあと実は私用がありますので
ずっとこの男性と話しているわけにもいかないので、この場を離れるためにワインを呑みきったのだが男性は解放するつもりなどなかったように手を掴んできた。
「待って、その先約が終わったらその後僕ともう一杯どうかな?」
男性に手を掴まれたことに少し驚き、私は男性を見た。
面倒臭い、実は仕事できているのでとでも言えば解放してくれるだろうか?と意を決した。

「あの、私実はー」
掴まれていた手に指が絡められ、言葉が出てこなくたったその時、

「探したよ~?名前。」
……………えっ」

驚く私とその男性の間に割り込んできたのは、長身でタキシードを着てこの場所には似合わないサングラスをした彼。
恋人である悟さんだった。

「あ………、連れの男性がいたんだ?なんだ、じゃあ僕はこれで。」
その男性はパッと何事もなかったように手を離し、言葉とは裏腹に爽やかに笑ってその場を後にした。

残された私と悟さんの間には少し沈黙が流れた。非常に怖い。

「何手握られてんの。あと、何でここにいるのか……、説明してくるよね?」
予想外だったが、悟さんは五条家としてこのパーティーに参加していたのだ。
いつも嫌だと駄々をこねている彼が、今日は五条家の当主としての仕事を全うしていたらしい。

サングラスの奥にうっすら見える目は笑っていない。
にこやかなその笑顔もハリボテだ。直ぐにわかる。
「はい。それは……勿論。」

悟さんは私の手を取り、スタスタとどこかへ歩いて行った。

 

**

 

人ごみをかき分けてついた場所は開けたバルコニー。
まだ冬で気温も低く、肌寒い。
ドレスやタキシードでは冷えるからだろうか、バルコニーに人は一人もいなかった。

「君に似てるなぁって思ってよく見てみたら、まさかの本物だった。……僕結構驚いたんだけど。………どうしてここに?」
バルコニーに着くなり私の手を離して、悟さんは手すりにもたれ掛かり不機嫌そうな顔で聞いてきた。

「あの、任務です…………。はい。……呪霊がで、出てきたら…………払って帰ります。」
不機嫌丸出しオーラをビシビシと感じ取りながら、簡潔に伝えた。

………ふうん。五条家が参加するこのパーティーに僕は参加したがらないだろうから名前に任務が回ってきたってワケか。あ、そういえば昔テロがあったんだっけこのパーティー会場。」
悟さんは頭の回転が早い。任務、と告げただけで理解したらしい。

……さすが悟さん。理解がはや……っ」
早いですね、と言う言葉は最後まで言わせてもらえなかった。
ドレスの谷間部分に人差し指を引っ掛けられ、悟さんの方へと引き寄せられたからだ。

……で、これは何?」
「え?何って…………ドレスです、けど?」

悟さんは更に不機嫌な声色で、眉間に皺を寄せた。
「分かるだろ。こんなに肌を出す必要………あるの?」

「や、それはドレスを買いに行ったら店員さんが、これくらい肌出さないと逆に浮きますよって言うから………。」
これは怒っている、と感じ取りすぐさま言い訳の言葉を並べた。
……
悟さんは品定めするようにドレスをジロリと眺めた。

お仕事なのでしょうがありません。その、これ位は目をつぶってください。」
恋人になってからというもの、彼は嫉妬だの独占欲だのが物凄い。
………
自分の方が女性からモテまくるくせに何なんだろうこれは。

「へぇ、生意気言うようになったね名前。まぁ良いけどさ。………後で覚えてろよ。」
最後の一言は耳元で囁かれ、私は身震いしたのだった。

ドレスの胸元に引っ掛けていた指を離し、悟さんは解放してくれた。

「ま………僕も今日はちょっとした野暮用で参加しただけだから、もう帰るつもりだったんだけど。君がいるなら僕も最後までいようかなぁ~。」
「えっ………まさかとは思いますけど、私の任務なので手出しは不要ですよ?」
「わーーかってるよ、そんなこと。」

悟さんは「寒いしホールに戻ろっか」と今度は優しく手を引いてくれた。

「あ……肝心なこと言い忘れてた。このパーティーで出されるお酒は一切口にするなよ。」
………………?、はい。」
釘を刺すように強く言われたその言葉にひっかかりを覚えたが、とりあえず後で聞こう、と今はスルーしておいた。

 

**

 

もうすぐでスピーチが始まる予定の時刻になる。
まさか人前で呪霊を祓うかもしれないなんて―――、仮に呪霊がいたとして、帳も貼っていないしどうするつもりなのか。
……
なんて思いながら呪霊の気配を探る。

本当に何も感じ取れない。
静かすぎるくらい気配も何も感じない。

悟さんはと言うと、関係者に挨拶しながらも私にはしっかり目配せをしつつ器用に会場内を歩いている。

その時、会場内の照明がパッと消え、壇上に光が集まった。

――――皆様お待たせいたしました!」
「今晩はお集まりいただき誠にありがとうございます。」

ステージ上にスポットライトが当たり、貫禄のある男性がスピーチを始める。

―――すると。

――――――――――

一瞬の間、大きく体高の高い鯨のような呪霊が壇上に現れ、音波のような叫び声を発した。
「!?」

全く気配がなかった。五メートル程ある大きな呪霊だと言うのに呪力をまったく感じなかった。
六眼を持つ悟さんですら気付かなかったのか、楽しそうに笑う横顔が目に入った。

会場内にいた人がバタバタと倒れていく。
呪力を持たない人は呪霊の音波をまともに食らったんだろう。

急いで近くに倒れた女性の脈を確認するため、手首に指を押しつけた。
…………寝てる、だけ?」

普通に呼吸もしており、恐らく眠っているだけのようだ。
それを確認した私は瞬時に帳を張った。

直ぐに戦闘体制をとり、右手を前に突き出しデコピンの形をとった。
………………いくら鯨でも燃えるでしょ。」

指先に呪力を込め「放出」と小さく呟き、そのまま中指を弾く。
すると指先から呪霊に向け寸分狂いない熱風が起こる。

熱風といっても激熱の二百度に調整した。
会場内は無事なように細い糸のような形で呪霊近くまで熱風を運び、近づいたら放射状に熱風を小さく破裂させた。
流石に溶けただろうと思って右手の力を緩める。

―――僕、手伝おうか?」
悟さんはというとテーブルの上に腰掛け、不適な笑みを浮かべながら膝を組み頬杖をついていた。

いえ、余裕ですから大丈夫です。」
………ククッ、言うねぇ。」
楽しそうに喉を鳴らす悟さんは放っておいて、鯨の呪霊はというと、熱風は直撃したというのに溶けきってはいなかったらしい。

安易な考えだけど、鯨だし水のバリア的なものでも張って温度を下げたのか?
鯨に目線を戻すと、鯨の瞳がこちらを見て「………眠った後に、全員、食べてやるからヨ」とニタァと笑い私の元へと瞬間移動した。

「うん。―――呪力を隠すことに長けた一級ってところかな?」
悟さんの声が後ろから聞こえた。
呪霊は鯨の背びれから二本、腕のような触覚のようなモノを伸ばして目に見えぬ速さで飛んできた。
ーが、その動きを見切り私は地面を蹴った。

術式を使い、空気の流れを作って風を作り、その力も借りて少し高く飛び上がった。
真上に高く飛び上がったのだが、呪霊には見えていないようだ。
呪霊は目の前に居なくなった私を探しているのが確認出来る。

私は呪霊の背中から下降し、背中に手のひらをつけ「放出、」と小さく呟き体内から電気を呪力で打ち出し直接体内へぶつけた。
いくらバリア的なもので緩和されたとしても直で打ち込めば問題ないだろうと考えたのだ。

グ、……………ぅ」
呪霊は少しもがくような声を上げ、そのままサラサラと消えていった。

…………前より強くなったね~!流石は特級に昇格しただけあるよ名前!」
ニヤニヤと笑う悟さんはとても楽しそうに観戦していたようだ。

…………………あれ?」
呪霊が跡形もなく消えていき、そのまま後は地面に着地するだけなのに、全く体に力が入らない。
というかむしろ、手足が痺れている気がする。

術式使いすぎた?いや、そんなまさか。

体高の高かった呪霊の背中に手を当てた場所から、受け身も取れずそのまま地面へ落下する。
え、名前?」
不思議そうな声を上げた悟さんを見る暇もなく―――、落下していく。

これは痛いだろうな、と地面とぶつかることを覚悟した。

「ーえ、なに、どうしたの?」
さすが、最強の呪術師、悟さん。
異変に気づいた彼は落ちてくる私のことを咄嗟に受け止めてくれたのだ。

綺麗に姫抱きにされ、地面にぶつからなくて良かった、と安堵のため息をついた。

「攻撃受けたようには見えなかったけど。」
大丈夫?と少し心配そうに、悟さんは私が張った帳を解いた。
結局、最後の最後に助けてもらうことになってしまった。

………体に力が入らなくて………どうして?なんか、痺れて………?」
私は頭にはてなを浮かべ自分の手足を動かそうとするも、痺れていて感覚がない。
頭も回るし、口も動く。悟さんの言う通り、何も攻撃は受けていない。

…………あ、名前もしかしてお酒呑んだ?」
「え?………あ、みんなに配られてたワインなら、呑みましたよ?」

悟さんは器用に片手でサングラスを外し、無言のままジャケットのポケットにしまったあと私を両手で抱き直した。

「ほんっと…………、警戒心が薄いよねぇ。あの時僕が声かける前に呑んでたのか。」
呆れたように悟さんは私を横抱きにしたまま、何処かへ歩いていく。

…………………………???」

私は全く状況が飲み込めないまま、悟さんはホールを出てエレベーターに乗り込んだ。

「え?状況が全く飲み込めないのですが………?眠らされてただけだとは思いますがみんな放っておくわけには………、」
「もう高専には連絡済みだよ。大丈夫。もうすぐ来るでしょ。」

目的の階についたらしい。ポーンと音がなり、止まったであろう光っている階数のボタンを見ると……

………六十……………!?」

見たことないその階数に驚きを隠せなかった。
こんな高層階、聞かなくても分かる。

ここは東京で一、二を争う高級ホテル。
そう、ホテルだ。

……え、ちょっとまっ……………え?」
ジタバタと抵抗したいところだが、体に力が入らず声だけの抵抗になってしまう。

「ハイハイ。ちょっと待ってね~」
とある部屋の前で泊まり、また片手で私を支え、
胸元からカードを取り出し、入口の機械にかざすと「ピ」と音が鳴りガチャリと鍵が開く。

…………………………まさか」
開いた扉の先は、見渡す限りやはり高層階スイートでパノラマ……。これでもかと夜景が一望できる部屋だった。

 

**

 

名前とバルコニーで話した後、すぐに部屋押さえといて良かった。」
真ん中に置かれたダブルより広いサイズのベッドの上に下ろされ、寝かされる。

悟さん…………嘘でしょ……?」
体が痺れて手足が全く使い物にならない私は、目の前の悟さんの行動に覚悟を決めざるを得なかった。

悟さんはシュルシュルとネクタイを解きながら「タキシードとかほんっとかったるいよね~」といいながらポイポイと服を脱いでいくのだ。
………あ、名前は身体痺れてて動けないんだっけ?だーいじょうぶ!僕が責任持って介抱してあげる」

わざとらしく言うなり上半身裸になった悟さんは私のドレスを簡単に脱がしていく。

「や、やだ、待ってくだ…………!」
ドレス用にと、つけていたヌーブラも剥がされ、ご丁寧にハイヒールやアクセサリーも外された。
「このパーティーは悪い大人の遊び場としても有名で、気に入った女の子を見つけたら………こうやって上のホテルに連れ込むのがいつもの流れ。」
………………へ?」
力の入らない両腕でなんとか一際纏わない姿の自分を抱きしめる。
今日はまったくこんな予定ではなかったのだ、恥ずかしさが込み上げてきて身体を隠したいのに上手く腕に力が入らない。

「最初に配られるワインには女性だけ薬が盛られてる。気付いてなかっただろ。……………良かったね僕もこのパーティーに参加してて。」
……………うそ。」

私の顔の横に悟さんは手をつき、そのまま覆いかぶさってきた。
―――はぁ。ほんとに。鈍いっていうかドジっていうか……警戒心が薄いっていうか……………。」
「ご、ごめんなさ………悟さん、でも……本当に待っ…………
本当に力が入らない。
このままだと悟さんのされるがままになってしまう。

なんとかそれは避けたいと、懇願しようとするが―――

「僕より先に死んだら―――、呪いの言葉を吐くからな。」
心配、呆れ、寂しさ、怒り。いろんな表情を滲ませた悟さんは少し低めの声で言った。

……………死にませんよ。もし私が先に死んだら―――、呪ってくれて構いません。」
そんなことを言われては抵抗などできる訳もなく、力の入らない震えた手を必死に伸ばそうとした。
――悟さんはそれに気付き指を絡めてくれた。

「頼むからもっと……警戒心持って。あと、今後僕以外の男の前で肌出すのは禁止ね。―――油断も隙もないよほんと。」
………は、はい。」

……と、いうわけでぇ………!」
悟さんは一気に声色が変わった。
楽しそうに私の体をまじまじと見る。

………!?……………え」
「いや~良い眺めだな~。最高。」
悟さんは躊躇いなく私の膝をガバッと開き、明るい中晒されているそこに顔を近づけ、ぺろりと舐め上げた。

………なッ!?」
「普段恥ずかしがって見せてくれないじゃん。今日は僕のやりたい放題にできる力入んないんでしょ?」
なんて言うとそのまま目の前の秘部へ舌をねじ込んできた。

「やっ……やだぁっ………んぁあっ…………!?」
生理的な涙がポロポロと頰を伝っていく。

「もうびしょびしょだけど……そんなに気持ちいいの?」
体に力が入らないことを良いことにこの男は好き放題にやっている。

「んっあっ……やっ………もうむ……りぃっ」
少し上にある突起も指で弄られ、体は簡単に絶頂に達してしまう。

「はぁ……名前のそんな顔初めて見たかも。たまんないなぁ。……僕のこと煽ってんの?」
ニッと口の端を上げた悟さんは、止まることなく溢れ続けているソレをじゅるとワザとらしく音を立てて吸った。

あ!……ちょ、……なにし、…………て!?」
その間も与えられる快楽は止むことがない。

…………分かんない?僕からのお仕置きだよ。」
悟さんは「もうイケるよね」とガチャガチャとベルトを外し、ズボンもパンツもベッドの下に落とし、既に反り立っているソレを何も纏わぬ状態でぶち込んできた。

………っは、きもちいー、」
「悟さ………ちょっ、それ、ナマッ………

悟さんは私のソレで濡れた口元を手でぐっと拭った後、私の唇を塞ぎ、舌を押し入れられた。

どう?お前の味だよ。」
…………ッわ、わかんな………んん!」

私のソレなのかお互いの唾液なのか―――、分からないまま舌を絡め続ける。

名前、いつになったら結婚してくれるわけ?」
激しく腰を打ち付けながら彼はそんなことを聞いてくる。
……っ、んっ、あっ、そ、れはっ……
名前は一般家庭の生まれだけどっ……、特級だし、子孫的には問題ないだろッ………

肌と肌がぶつかり合い、音が響く。

「んっ、っ……は、はげし………っ」
………ん、僕も一回出しとこうかなッ」

さらに激しく激しく打ち付けられ、そのまま中へと直接吐き出された。

―――ッッ!、やぁあぁあぁんっ」
体がビクビクと震えその快楽から逃げようと身体を捻ろうとすると、悟さんはそれに気付き腰を掴んできた。

――こら、逃げないの。」
悟さんのソレは全部吐き出しても、またすぐに大きくなっていて再び熱を帯びていた。

「中に出されるの、たまらないだろ?僕だけの―――特権だ。」
また律動が繰り返され、孕ませるとでも言いたげに何度も何度も直接欲を吐き出された。

私は恥ずかしさやら、抵抗できない情けなさやら、与えられる快楽に抗えず何も考えられなくなって行ったのだった。

 

**

 

「悟さんんんんんっ!」
ホテルで目を覚まして直ぐ、悟さんの名を叫んだ。

「朝から元気だねぇ~何?まだヤり足りないの?」
「そうじゃありません!もう!なんで生でするの!」
恋人になってから避妊具を使わず……こういうことをするのは初めてだった。

「ダメなの?僕はお前のこと手放す気はないし、するでしょ、結婚。」
「や、いや………はいそれは……………ってそうじゃなくて!!」
流されそうになる私は布団を強く握り引き寄せた。

「出来たら責任取るよ。可愛いんだろうな~お前との子供!……っていうかさ、名前も何だかんだでいつもより気持ちよさそうだったじゃん。」
―――ッ、そういう問題じゃないでしょ!もうっ!!」
手元にあった枕を悟さんへ向かって投げた。案の定、無限で当たりはしないのだが。
悟さんは既にガウンを羽織り、ルームサービスのココアを飲みながら楽しそうにニコニコしている。

「あっぶないなぁ~」
当の本人はズズッと美味しそうにココアを口に運んでいる。

………………あぁぁあ~!!」
苛立ちながらも、律儀に用意してくれていたココアへ私も手を伸ばすのだった。